研究課題
エンドセリン受容体とは、ペプチドホルモンであるエンドセリン-1によって活性化されるGタンパク質共役受容体であり、血圧などの体内の恒常性を担う様々なシグナル伝達に関与している。エンドセリンシグナルの異常な上昇は高血圧やがんにつながるため、エンドセリン受容体アンタゴニストはこうした疾患に対する治療薬として研究されている。実際に、アンタゴニストであるボセンタンが肺動脈性高血圧の治療薬として使われている。本年度は、ヒト由来エンドセリン受容体B型(ETBR)とアンタゴニストであるボセンタン、K-8794との複合体のX線結晶構造解析に成功し、その成果を論文発表した。ボセンタンは、その活性に重要なスルホンミド基が受容体のアルギニン残基、リシン残基とイオン性相互作用を形成していた。ボセンタン結合型構造はリガンド非結合状態の不活性型の受容体構造と酷似しており、ボセンタンは受容体の不活性型構造を安定化することでアンタゴニストとして働くことを明らかにした。これにより、ボセンタンの結合様式やどのようにして受容体を不活性化しているのか、その構造基盤が明らかになった。こうした成果は、構造情報を元したアンタゴニストの理論的な開発に役立つものである。さらに、ETBRと4つの異なるアゴニスト・アンタゴニスとの共結晶化に成功し、その構造解析に成功した。これらの成果をまとめて、現在論文投稿を準備している。更に、他のいくつかのGPCRの発現・精製に成功し、結晶を得ることに成功している。
1: 当初の計画以上に進展している
ボセンタンおよびその誘導体K-8794との複合体構造の成果は高く評価され、Nature structual and molecular biology誌に掲載された。また、ETBRの他のリガンドとの複合体についても構造解析に成功し、それらを2つの論文としてまとめる予定である。また、新規GPCRについて結晶化に成功し、その構造解析の達成まであと一歩のところまで来ている。
結晶が得られているGPCRに関しては、今後X線結晶構造解析に向けて結晶化条件の最適化を行い、構造決定を目指す。また、今後はサブタイプ選択性の詳細な理解のためにヒト由来エンドセリン受容体A型の発現・精製系を構築し、エンドセリンやA型選択的な阻害剤との複合体の構造解析を目指す。
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Nature Structural and Molecular Biology
巻: 24 ページ: 758, 764
doi:10.1038/nsmb.3450