近年著しく発展している老化研究により、個体の老化(aging)に細胞の老化(cellular senescence)が関与することが示唆されている。細胞老化とは、様々なストレス(テロメアの短縮、発がんシグナルの活性化、酸化ストレスなど)により細胞に修復不可能なDNA損傷が生じた際に、p53-p21経路やRB (Retinoblastoma)-p16経路の活性化を経て細胞分裂を不可逆的に停止する状態である。 本研究では、細胞老化による核小体の形態変化に関わる転写因子が細胞老化を抑制する分子機構を明らかにすることを目的とした。次世代シーケンス解析を行い、標的遺伝子の探索を行った結果、既に細胞老化に関わることが報告されている遺伝子や、細胞老化との関連は全く報告がない遺伝子を含む、約200遺伝子の標的遺伝子を同定した。さらに、標的遺伝子の絞り込みを行い、細胞老化に重要な遺伝子の発現制御に転写因子が重要であることを明らかにした。また、ノックアウトマウスの解析を行った結果、この転写因子が個体及び細胞において標的遺伝子の発現制御により細胞老化に関わる重要な因子であることを明らかにした。
|