研究実績の概要 |
細胞極性の消失は多くのがん細胞で見られる特徴であり、その悪性度を判断する上でも重要な情報である。近年、繋留因子(Tethering factor)であるexocyst複合体が細胞極性因子Par3と結合し、正常乳腺細胞の生存性を決定するという報告が成された。しかし、哺乳類細胞におけるexocyst複合体の分子機構は不明な点が多く、より詳細な解析が求められていた。 本研究では、CRISPR/Cas9を利用し、細胞極性制御因子であるexocystの5つのサブユニットにsfGFPが融合したexocyst-sfGFPノックイン細胞株を作成した。膜融合時の各exocystサブユニットの役割を調べるために、樹立した5つのノックイン細胞株を用いて、内在性exocyst subunitとvesicle fusion markerの時空間的発現様式を全反射照明顕微鏡(Total internal reflection fluorescence microscope, TIRFM)により高速撮影した。その結果、マウス乳腺上皮細胞株において、exocyst複合体は2つのsubcomplexから構成されること、膜融合直前に解離すること、約9つのexocyst複合体が1回の膜融合に関わることなどが明らかになった。残りの3つのexocystサブユニットの細胞内局在を詳細に観察するために、Cas9-gRNA ribonucleoproteins (RNPs)を用いたノックイン細胞の作成を進めている。
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