研究課題/領域番号 |
17J40033
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
中尾 香菜子 国際医療福祉大学, 薬学部, 特別研究員(RPD) (30583059)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 嚢胞性繊維症 / CFTR / 日本人変異体 |
研究実績の概要 |
本研究では、国内CF患者から同定されたアミノ酸置換を伴うCFTR遺伝子変異に着目し、それらがCFTRタンパク質の発現、局在、機能に与える影響をin vitroの実験系で検証することを目的としている。初年度となる平成29年度は、以下の2点に焦点を絞り、研究を行った。 1. 大規模欠損体CFTR-del(G970-T1122)の特性解析 大規模欠損体であるCFTR-del(G970-T1122)は、これまで日本人含めたアジア人のみで検出されているアジア人特異的な変異である。さらに、この変異体は、日本人CF患者でかなりの高頻度で検出されており、ホモ接合体の患者も存在する。そこで、まずCFTR-del(G970-T1122)に着目し、その発現様式・機能の検証を行った。このCFTR-del(G970-T1122)は、150ものアミノ酸が欠損しているにも関わらず、タンパク質として翻訳されるが、プロセシング異常により、細胞膜発現異常を引き起こすClass Ⅱであることが明らかとなった。しかしながら、温度救済法やVX-809処理といった、一部のClass Ⅱ 変異体に有効である処理も、この大規模欠損体の細胞膜への発現を上昇させることはなかった。 2. 日本人特異的な変異型CFTRの評価を行うための実験系の構築 日本のCF登録制度事務局である名古屋大学・石黒洋先生らのグループによって、これまでに国内のCF患者から解析されたCFTR遺伝子変異25種類(アミノ酸置換・欠損を伴うもの)のうち、日本人患者から検出された計8種について、発現系を構築し、その変異classを予測した。8種類の遺伝子変異の多くが、プロセシング異常を引き起こすclass Ⅱであったが、いくつかの変異は、チャネル機能異常を引き起こすclass Ⅲないしclass Ⅳであると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「新規CFTR関連疾患群の概念確立と治療薬開発をめざした日本人型CFTRの特性解析」というテーマのもと、平成29年度は、日本人CF患者で高頻度に検出されているCFTR-del(G970-T1122)に着目した研究を行ってきた。この変異型CFTRタンパク質は、プロセシング異常を引き起こすため、細胞膜への輸送と発現に障害をきたすことが明らかとなった。上記変異体についての発現様式や機能についての知見をまとめ、現在、国際的専門誌に投稿中である。 本研究は、今年度初頭に当初予定していた所属機関からの異動に伴い、国際医療福祉大学・薬学部でスタートした。研究テーマ開始に先駆け、新しい所属機関での実験設備等の立ち上げが必要となった。そのため、研究計画の遅れが心配されたが、順調に実験設備の調整等を行うことができたため、ほぼ当初の計画通りの研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、日本人CF患者から検出された中でも特に注目度の高いCFTR-del(G970-T1122)についての検証を行った。この大規模欠損体は、細胞膜の発現がほとんど認められず、細胞内に蓄積する傾向にあったため、直接的にそのチャネル機能を評価することは難しいと考えられた。そこで、次年度以降は、この大規模欠損型CFTRについてさらなる知見を得るため、細胞内に蓄積されたCFTRの細胞膜への移行を促すような薬剤処理等を検討しつつ、細胞内におけるタンパク質品質管理機構との関わりを検証していきたいと考えている。 さらに、日本人CF患者から検出されたCFTR変異について、その変異classに応じた機能特性について検証する。初年度に立ち上げを行った電気生理関連の実験設備を用いて、変異型CFTRのイオンチャネルとしての機能評価を行う。また、VX770やVX809といったCF治療薬は、それぞれ有効なCFTR変異classが明らかである。それらの治療薬の日本人由来変異型CFTRに対する有効性の検証も行う予定である
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