本研究ではレジオネラの感染に必須のDot/Icm IV型分泌装置の3つのATPaseの役割に着目し研究を実施した。これまでに、内膜に局在するDot/Icmタンパク質DotIとDotJが安定なヘテロ内膜複合体を形成すること、また、このヘテロ内膜複合体と3つのATPaseのうちの1つとの間に遺伝学的相互作用が見られることがわかっている。そこで、本研究ではこのヘテロ内膜複合体とATPaseの構造解析に向けて、これらの生化学的な相互作用について解析した。具体的には、StrepタグとFLAGタグを用いてヘテロ内膜複合体とATPaseの3者を同時発現可能な系を構築し、大腸菌内で発現誘導後に、3者複合体が内膜で形成されるかどうかを調べた。まず、発現誘導後に菌を破壊し、界面活性剤を用いて膜画分を抽出、そして、ゲル濾過カラムを用いて3者複合体を含む可能性のある画分を得た。続いて、この画分をブルーネイティブPAGEと抗ATPase抗体を用いたウェスタンブロットにより解析した結果、3者複合体は、約700kDaの複合体の画分に含まれていることが明らかになり、ヘテロ内膜複合体とATPaseが直接的に相互作用している可能性を示唆していた。同時に、同様の系で精製したヘテロ内膜複合体のみを用いて、電子顕微鏡下で構造を観察した。しかし、タンパク質複合体を確認できたものの、複合体濃度の調整と、支持膜の条件検討が必要であることがわかった。今後は、ヘテロ内膜複合体とATPaseの3者複合体の構造解析を引き続き進めていく予定である。
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