研究課題/領域番号 |
17J40101
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥村(城尾) 晶子 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | RUNXファミリー / ガン |
研究実績の概要 |
RUNXファミリーはRUNTドメインを有する転写因子であり、ヒトではRUNX1、RUNX2、RUNX3から構成されている。RUNTドメインは特異的な塩基配列の認識やコファクターであるCBF betaとの結合に必須である。先行研究により、RUNXファミリーは個体の発生や細胞のガン化に関与することが示唆された。RUNX1は血液幹細胞の産生および血球系分化に働き、変異体は血液腫瘍に関与している。RUNX2は骨芽細胞の骨分化を制御しており、骨肉腫、大腸ガン、乳ガンなどで高発現している。RUNX3は胃ガンにおいて抑制的に働くという報告がある。申請者は、RUNX1の新規結合タンパク質としてAEBPを見出し、相互作用について検討してきた。本研究ではガン発症に深く関連するDNA損傷後のゲノムの恒常性の維持におけるRUNX-AEBP複合体の役割を明らかにする。 申請者は、RUNX1とAEBPとの分子間結合および相互作用に関する論文の投稿準備中であり、追加実験や論文の執筆を行った。また、今年度は新たにヒトRUNX2およびRUNX3のクローニングを行って、AEBPとの分子間結合を確認すると共に、ヒトの腫瘍由来の培養細胞株を用いて過剰発現、あるいは発現抑制の実験系を立ち上げた。更に、機能解析を行ったところ興味深い相互作用が見出されたため、現在、発現量の制御や細胞増殖、細胞応答などへの影響について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、RUNX1の新規結合タンパク質としてAEBPを見出し、機能的な相互作用について検討してきた。ヒトの血球系培養細胞などを用いて、ウエスタンブロッティング、細胞免疫染色、フローサイトメトリー法により実験を行ったところ、AEBPの活性や下流遺伝子の発現制御、細胞応答などに影響があるという重要な結果を得た。また、MDS、FPD/AML、CMLなどの血液腫瘍患者において検出されたRUNX1変異体(RUNTドメイン内のミスセンス変異)とAEBPとの結合活性について検討したところ、野生型に対して有意な差が見られた。更に、これらのRUNX1変異体の過剰発現およびAEBPの発現抑制を行い、タンパク質の安定性や活性に対する相互作用について検討した。現在、論文の投稿準備中である。 なお、ヒトRUNXファミリーにおいてRUNTドメインのアミノ酸配列は90%以上と高いホモロジーを示している。そこで、AEBPはヒトRUNX2およびRUNX3とも結合し、機能的相互作用を及ぼす可能性を考えた。まず、ヒトRUNX2およびRUNX3の発現ベクターを作製し、293T細胞の内在性AEBPとの結合活性について確認した。次に、ヒトの腫瘍由来の培養細胞株におけるRUNX2あるいはRUNX3タンパク質の発現についてウエスタンブロッティング法を用いて検討した。このうち、内在性RUNX2が高発現している細胞株を用いてRUNX2あるいはAEBPの発現抑制を行い、タンパク質の安定性への影響について調べた。また、RUNX2を安定的に過剰発現する細胞株を作成し、AEBPの活性および細胞応答について検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
RUNX1とAEBPとの結合および相互作用に関する論文を学術雑誌に投稿し、早期の発表を目指す。 また、転写因子RUNX2に注目し、新規結合タンパク質AEBPとの機能的相互作用について検討を行う。まず、内在性RUNX2を高発現しているヒトの腫瘍由来の培養細胞株を用いて、発現抑制あるいは過剰発現を行い、RUNX2およびAEBPの発現量の変化について調べる。また、マイクロアレイを用いて腫瘍化関連遺伝子の網羅的な検索を行うと共に、RUNX2によって転写活性制御を受ける既知の下流遺伝子や、骨芽細胞の骨分化への影響について検討する。更にヒトの腫瘍で検出された変異型RUNX2についてもクローニングを行って、野生型との比較を試みる予定である。
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