RUNXファミリーはRUNTドメインを有する転写因子であり、ヒトではRUNX1、RUNX2、RUNX3から構成されている。RUNTドメインは特異的な塩基配列の認識やコファクターであるCBF betaとの結合に必須である。先行研究により、RUNXファミリーは個体の発生や細胞の腫瘍化に関与することが報告されている。RUNX1は血液幹細胞の産生および血球系分化に働き、変異体は血液腫瘍に関与している。RUNX2は骨芽細胞の骨分化を制御しており、骨肉腫、大腸ガン、乳ガンなどで高発現している。RUNX3は胃ガンにおいて抑制的に働くという報告がある。 申請者はRUNX1の新規結合タンパク質としてAEBPを見出し、分子間結合、発現量の制御、活性への影響といった相互作用について興味深い知見を得た。また、RUNX2についてもAEBPとの分子間結合を確認すると共に、ヒト骨肉腫細胞を用いた過剰発現および発現抑制の実験系を立ち上げて、機能解析に取り組んだ。薬剤処理後のAEBPの活性および細胞応答について調べたところ、RUNX2とAEBPの間に興味深い相互作用が見出された。更に、RUNX2を過剰発現する細胞株を作成してRNAを精製し、マイクロアレイ法を用いて既知のAEBP関連因子の発現量への影響を調べると共に、細胞のガン化や分化に関連する遺伝子の網羅的な検索を行った。得られた候補遺伝子について、RT-qPCR法によるmRNAの定量解析を行い、結果が一致することを確認した。今後は、ウエスタンブロット解析、細胞免疫染色、フローサイトメトリーなどの実験手法を用いて、RUNX2がAEBPとの相互作用を通してどのように細胞のガン化や分化を誘導するのか、その詳しいメカニズムの解明を目指す。
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