研究課題/領域番号 |
17J40121
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
池内 桃子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2017-07-03 – 2021-03-31
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キーワード | 器官再生 / 細胞リプログラミング |
研究実績の概要 |
植物の再生能力は種ごとに大きく異なっているが、再生能力の違いが何に起因するのかという点はまったく分かっていない。表皮細胞など高度に分化した細胞種が脱分化して再生芽を形成するイワタバコ科植物を新たな再生研究のモデル系とし、モデル種として確立されたシロイヌナズナとの比較を通して、種間比較をするための準備を進めてきた。イワタバコ科を用いた研究はこれまではPrimulina vertigo を用いて行ってきたが、本種は雑種であり遺伝子発現解析や遺伝学的な解析に最適ではなく、予備的に行っていたRNA-seqでも遺伝子の検出に再現性が見られないといった問題が見られた。本年度はイワタバコ科のモデル種として整備が進んでいるChirita pumila への実験の切り替え準備を進めた。Chirita pumila の最適な栽培環境を見つけ、世代を回して種子を増やすことができた。また、無菌的に栽培した個体から外植片を培養して、Primulina vertigo で見られたような表皮細胞からの細胞脱分化・シュート再生が起こることを確認した。また、アグロバクテリアを用いた形質転換系に取り組み始めた。シロイヌナズナを用いた研究では、カルスの再生能力に関する興味深い知見を得た。私が過去に行った器官切断後のタイムコースRNA-seq 解析(Ikeuchi et al., 2017)のデータから、切断後速やかに遺伝子発現が誘導される遺伝子としてWOX13という遺伝子に着目して機能欠損体の表現型解析を行ったところ、カルスは小型化するものの、カルスからの根や茎葉の再生能力が向上していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を始めた当初は雑種を用いて予備的な観察データを得ていたが、今年度は様々な解析に適した種を使い始め、実験系の確立を進めた。今年度は、長期的な研究を展開する礎を築くことができたと考えている。また、シロイヌナズナを用いた研究の方では興味深い新たな知見が得られており、今後大きく展開することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、イワタバコ科のChirita pumila でアグロバクテリアを用いた遺伝子導入法の確立を最優先課題とする。遺伝子導入を安定的に行うことができるようになれば、メリステム形成に重要な役割を果たすことと予想されるオーキシン・サイトカイニン応答系のレポーター遺伝子を導入し、時空間的なパターンを観察する。また、阻害剤を用いた実験を進め、オーキシンの輸送やサイトカイニン応答などが細胞の脱分化、およびパターン形成に果たす役割を明らかにすることを目指す。
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