本研究は、シロイヌナズナおよびユニークな再生様式を有するイワタバコ科植物の比較を通して、再生メカニズムの多様性を明らかにすることを目的として行ってきた。第一に、表皮細胞など高度に分化した細胞種が脱分化して再生芽を形成するイワタバコ科植物を新たな再生研究のモデル系とすべく研究を進めてきた。これまで予備的な実験はPrimulina vertigo を用いて行ってきたが、本種は雑種であり遺伝子発現解析や遺伝学的な解析に最適ではないため、イワタバコ科のモデル種として整備が進んでいるChirita pumila への切り替え準備を進めてきた。Chirita pumila においてアグロバクテリアを用いた形質転換系に取り組んでおり、条件検討を進めた。また、葉の表皮細胞が分裂して新たなメリステムを形成するというユニークな現象を深く理解するために、細胞分裂パターンの画像解析によって数理的に解析する方法を検討した。シロイヌナズナを使ったプロジェクトでは、カルスの再生能力を制御する新規因子の同定と解析を進めることができた。さらに組織学的な解析を進めた結果、本変異体ではカルスの中で幹細胞形成に寄与する細胞種の割合が高まっているのではないかという着想を得た。そこでこの仮説を検討するために、野生型と変異体においてカルスの1細胞RNA-seq 解析を行った。これまでに条件検討をすすめ、細胞分取とRNA抽出、cDNA合成まで完了した。
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