研究課題/領域番号 |
17J40136
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤本 晶子 九州大学, 国際宇宙天気科学・教育センター, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 電離圏電場観測 / 多点地磁気観測 / グローバルPc5 |
研究実績の概要 |
本研究では、高緯度から赤道への電場侵入と昼夜電離圏電場伝播過程を同時かつ直接的に把握するために、多点電離圏電場観測を行う。本年度は、既設の電離圏電場観測機器FM-CWレーダー観測点(日本、ロシア)の整備と新規観測点(ペルー)の設置に取り組んだ。ロシア・パラツンカ観測点ならびに日本・篠栗観測点の2地点の電離圏電場観測機器の故障箇所について調査ならびに修理の保守作業を実施し、定常観測への復旧作業を完了させた。現在、日本経度沿いの2点にて電離圏定常観測の運用中である。ペルーの新規観測点は、磁気赤道直下に位置するシカヤ観測点での本設置に向けた仮設置として7日間のキャンペーン観測を実施した。観測期間中には、電離圏電場観測機器FMCWレーダーと地上磁場観測機器MAGDAS磁力計の両観測において、太陽風動圧の影響を受けた地球磁気圏磁場変動の一つであるSC現象に関連した電離圏電場変動と地上磁場変動を捉えることに成功した。 一方で、既存の電離圏電場観測機器FM-CWレーダー観測点の拠点である日本、ロシア、フィリピンに設置している地上磁場観測機器MAGDAS磁力計の地磁気データアーカイブを用いて、全3観測点で電場と磁場観測の両方が揃う期間(2009年3~7月)について、グローバルPc5(150~600秒周期の地磁気脈動)の選定を行い、グローバルPc5の定性的な特性を捉えた。今回の解析期間におけるグローバルPc5は観測点の地方時が昼夜に関係なく確認されたが、赤道域で振幅増大するのは観測点が昼側に位置するときであることを明らかにした。このことは、赤道昼側で振幅増大するグローバルPc5が「磁気圏極域に侵入した太陽風電場の一部が極域から赤道域へ伝播した結果として観測される」ことを支持する証拠の一つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多点電離圏電場観測機器FM-CWレーダー観測拠点の再構築に関して、既存観測点(ロシア、日本)については機器の不具合を改善するとともに定常観測へ移行するに至り計画通りに遂行できた。一方、新規設置(ペルー)については、2017年3月の事前準備の段階で現地協力機関との間で機器設置許可の合意を得ていたが、ペルー国内情勢の影響を受けて2018年9月の本設置計画の遂行が困難となった。機器設置許可に関して協力機関との協議を重ね、2019年度での本設置許可の承認を得ることに成功した。2018年3月には観測点候補地においてFM-CWレーダーの仮設置による1週間のテスト観測を実施し、太陽風活動に同期した電離圏電場変動の高時間分解能(2分間隔)観測をFM-CWレーダーを用いて赤道域で初めて成功させた。過去のデータアーカイブを活用した解析研究では、統計解析に向けたグローバルPc5の定性的な特性を把握することができた。以上のとおり、当初の計画段階では予期できない状況が発生したが、研究計画に沿って概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は多点電離圏電場観測の構築を完了し、日本経度沿いとペルーでの昼夜電離圏電場・磁場同時観測の定常運用を開始する。観測データは各観測点より準リアルタイムで日本のデータ収集サーバーに集積し、地上磁場観測機器MAGDAS磁力計の地磁気準リアルタイムデータと合わせて自動解析処理することで、準リアルタイムにグローバルPc5の選定を行う。このように統計解析に向けたデータベースを作成するとともに、事例解析を行い電場侵入型グローバルPc5の発生割合が、太陽風構造・放射線帯電子増加に対してどのように依存するか解析し、グローバルPc5が太陽風構造のプロキシとして活用できるか明らかにする。これまでの得られた統計解析の結果を国内外学会にて発表し、さらに投稿論文にまとめる。
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