研究実績の概要 |
申請者は皮膚におけるHEV様血管の形成メカニズムとその役割を解き明かすことを研究目的と設定しており、今年度は、皮膚におけるHEV様血管の形成メカニズムの解明について特に研究を行った。申請者は、フローサイトメトリーを用いて、皮膚でのHEV様血管の簡便な定量法を既に確立していた。更に、予備的検討において、アトピー性皮膚炎モデルのマウス皮膚において、HEV様血管が著しく誘導されることを確認していた。この定量的手法とモデルを応用し、以下の実験を行った。LT inducer細胞欠損マウス: Rorg gfp/gfpマウス、CD169陽性マクロファージ誘導除去マウス:CD169DTR、樹状細胞の誘導的除去マウス:CD11cDTR、ケラチノサイトやリンパ管細胞特異的なIL-7ノックアウトマウスおよび全身性のノックアウトマウス:IL-7KOマウス、K5Cre:IL-7flox/flox、およびTie2Cre:IL-7flox/floxを入手し、アトピー性皮膚炎モデルにおけるこれらの因子のHEV様血管の誘導における重要性を確認した。この中で、CD11cDTRマウス、IL-7ノックアウトマウスで著明なHEV様血管形成阻害を得た。さらにLT・IL-7・RANKLなどの各種候補因子の阻害抗体を入手し、それぞれの抗体投与下(抗TNF-RI/II抗体、LTβR-Fc, anti-IL-7Ra 抗体, anti-RANKL抗体)において、アトピー性皮膚炎モデルにおけるHEV様血管の量を比較検討した。これらのうち、LTβR-Fc, anti-IL-7Ra 抗体投与下において、著明なHEV様血管形成阻害を得た。以上より、これまでのところ、アトピー性皮膚炎モデルにおいて、皮膚のHEV様血管形成には樹状細胞、LT- LTβR、 IL-7-IL-7Raシグナルが関与している可能性が強く示唆された。
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