研究課題/領域番号 |
17J40165
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
野中 由香莉 新潟大学, 医歯学系, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | コメ / ペプチド / 抗炎症 |
研究実績の概要 |
歯周病は歯周病原細菌の感染により生じる歯周組織の炎症、破壊であり、歯牙の喪失の主な原因となっている。プラークや歯石の機械的な除去が治療の基本であるが、急性炎症のある場合や難治性の症例には、抗菌薬の全身投与や、歯周ポケット内への局所投与が行われる。しかしながら、現代の医療現場において薬剤耐性菌の問題は深刻であり、抗菌薬の適応症例はより限定されなくてはならない。薬剤耐性菌を生じさせにくく、既存の抗菌薬治療に代わる新規の歯周病予防・治療薬の開発が必要とされている。 本研究の目的は、日本人の主食として身近でありふれた食品である、コメを原材料としたペプチド素材について、歯周病原細菌に対する抗菌・抗炎症作用とその作用機序について明らかとすることである。選定したペプチド素材について、歯周病医薬開発につながる生体防御機能についての基礎的データを得ることを目的としている。 米糠、米胚乳を原材料として、天然ペプチド素材を調整した。同天然ペプチド素材を対象として、抗炎症作用の評価を実施した。すなわち、ヒト単球由来細胞THP-1をPMA 10ng/mLにてマクロファージに分化させ、E. coli LPS またはP. gingivalis LPSにて刺激を行い、上清中に産生される炎症性サイトカインであるTNF-αに対する、ペプチド添加による抑制作用を検討した。その結果、いくつかの分画において、TNF-α産生量の抑制が認められた。さらに、THP-1細胞に対し、LPSおよびNigericinでインフラマソーム活性を誘導した。フラクションの添加により、IL-1β産生に対しても、産生抑制の作用が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究進捗状況としては、当初の計画と照らし合わせても、概ね期待通りの進展だったと考えている。研究成果としては、米ぬか、米胚乳を原料として精製されたフラクションを用いて、細胞レベルでの抗炎症作用のスクリーニングを行い、炎症性サイトカイン抑制を示す有効な結果が示された。炎症性だけでなく抗炎症性サイトカインに対しても、その制御作用を検証中である。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの実験から、米由来のペプチド素材の中には歯周病原細菌に対し、抗菌活性を示すものが含まれることが示された。口腔内の細菌の多くは、Biofilmを形成し局所に停滞することにより、う蝕や歯周病などの発症原因となっている。Biofilmの化学的な除去については、これまでに多数の研究が行われているが、現在のところ日本の臨床現場において非常に効果的といえる薬剤はまだないのが現状である。そこで、ペプチドのBiofilmへの作用に着目し、その抗菌作用とメカニズムについて検証を行う予定である。当初の計画においては、次年度はマウスを用いた歯周病モデルにおけるペプチド素材の予防、治療効果を検討する予定であったが、上記のように機能解析に追加すべき項目が生じたこと、またそのメカニズム解明の検討の必要があると考え、計画を変更する予定である。
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