研究課題
今年度は、既報の遺伝子変異が認められなかった46,XY性分化疾患(DSD)患者119例を対象にして、GATA4遺伝子の変異スクリーニングに取り組んだ。その結果、患者5例で2種類の塩基置換を同定した。機能解析の結果、4症例に同定されたp.P407Qは感受性多型であること、1例に同定されたp.R265Cは疾患発症へ影響のない塩基置換である可能性を見出した。重要な点として、心疾患の伴わない 46,XY DSD患者において、GATA4変異による疾患発症は稀であることを明らかとした。この成果は、英文科学雑誌への掲載された。上記の研究の他に、NR5A1遺伝子変異を同定した46,XX精巣性/卵精巣性DSDの1家系についての臨床像と、思春期早発症例に同定したPROKR2遺伝子の機能亢進変異について、共著者として論文報告に参加した。また、46,XY DSDの同胞例で同定したMAP3K1変異については、ナンセンス変異と推測される塩基置換が、スプライシングの変更を引き起こし、機能獲得変異となることを見出した。この成果は、現在論文執筆中である。さらに、包括的メチル化解析については、実験が終了し、現在結果の解析中である。特別研究員は性差研究の一環として、東京大学大学院・農学生命科学研究科・加藤久典研究室との共同研究を開始した。特記すべき成果として、約13000人の日本人ゲノムデータを用いたGWAS解析により、性差に関わるSNPを同定している。
2: おおむね順調に進展している
46,XY DSD患者より同定したGATA4の塩基置換についての研究が、英文科学雑誌へ掲載された。また、46,XY DSDの同胞例のMAP3K1変異についての研究は、現在論文作成中である。さらに、特別研究員は、本研究課題で得た成果を、幾つかの論文の共著者として発表している。以上により、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
今後は、今までに引き続き、原因不明の性分化疾患患者における包括的なゲノム解析を施行することにより、発症原因と性分化機構の解明を目指す。さらに、性差研究の一環として、健常日本人のゲノムデータを用いたGWAS解析から、性差に関わるSNPの同定を試みる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
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