研究実績の概要 |
46,XY性分化疾患を呈する兄弟のゲノムDNAを用い、エクソーム解析にて変異解析を行った。その結果、両者においてMAP3K1遺伝子エクソン13にヘテロ接合性1塩基置換(GCAA>GTAA)を検出した。この塩基置換はナンセンス変異であると推測されたが、患者の転写産物にはエクソン13の117塩基が欠失したmRNA(c.2254_2370del)と野生型mRNAがほぼ同程度の比率で含まれることが確認された。患者では、転写産物産生時にエクソン内の未成熟停止コドン(TAA)が選択されず、同部位の潜在性スプライスドナーサイト(GT)が活性化され、本来のエクソン配列の一部がスプライスアウトされたと推測される。同じMAP3K1変異を持つ彼の兄は、正常なゴナドトロピン値と抗ミュラー管ホルモン値に加え、外陰部の男性化不全を示した。エナント酸テストステロンの注射では、両患者のペニスのサイズはほとんど増加しなかった。この研究は、ナンセンス媒介のスプライシングエラーの新しい例を提供し、スプライス部位の認識が必ずしもコンセンサス配列を必要としない可能性があることを示した。さらに、われわれのデータは、MAP3K1異常の表現型スペクトルが現在認識されているよりも広く、アンドロゲン感受性の障害や生殖器形成不全を含むことを示唆した。この成果は、英文科学雑誌への論文投稿準備中である。他に、NR5A1遺伝子変異が同定された46,XX精巣性性分化疾患患者の臨床像についての論文報告にも参加し、掲載に至っている。 尿道下裂(46,XY性分化疾患の軽症型)の環境要因として、母親の飲酒とカフェイン暴露が報告されている。特別研究員は、食を対象としたゲノムワイド関連解析を行った。特記すべき成果として、飲酒頻度・コーヒー摂取量・魚の摂取頻度が同じ遺伝子座に関連する可能性を見出した。これらの成果は、英文科学雑誌に掲載されている。
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