研究課題
本研究は、1)注意や記憶、知覚領域におけるバイアスを包括的に緩和する介入として「認知バイアス緩和アプローチ (Cognitive Bias Modification: CBM)」の開発を行う。そして、2)神経症傾向の強い健常者を対象としてランダム化比較対照試験(RCT)を行い、CBMの効果について多角的に評価することを目的とする。今年度は、昨年度から引き続き、参加者募集および実験を行い、現在までに83名からデータを収集している(各種心理・行動指標・免疫炎症・内分泌系指標・神経画像・DNAを含む)。現在は、これまでに集積したデータの解析を進め、国際学術誌に投稿するため成果公開の準備を進めている。とりわけ、情動刺激の記憶の符号化および検索過程において、不安が異なる神経生物学的機序を通してそれぞれに固有の関与をしていることを見出しており、当領域の発展に貢献することを期するものである。また、意味連合ネットワークにおける偏りがストレス関連精神症状と強く関連することも見出しており、より効果的なCBMの開発において有用な知見を得ている。さらに、関連研究である注意バイアス緩和アプローチのランダム化比較対照試験の成果(その効果と神経作用機序)について国際学術誌に発表した他(Hakamata et al. Journal of Affective Disorders 2018)、内分泌指標により客観的に測定されたストレスが吻側海馬と外線条皮質の機能連結性を媒介して、視空間検索の低下に寄与することを見出した成果を、精神神経内分泌学分野における伝統的な国際学術誌に発表した(Hakamata et al. Psychoneuroendcrinology in press) 。
2: おおむね順調に進展している
順調にデータを収集している。とくに予備実験を通して、情動刺激の記憶の符号化および検索過程において、不安が異なる神経生物学的機序を通して、それぞれに固有の関与をしていることが示唆される結果を得ている。これらの知見は、当領域の発展に貢献することが期待される。
追加実験データを夏までに収集し、解析を行う。この結果も考慮しながら、認知バイアス緩和アプローチプログラムの改変を行う。インターネット広告等のリクルートを強化し、より意欲と関心を持って参加してもらえる参加者を募ることができるよう努める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Psychoneuroendocrinology
巻: 107 ページ: in press
10.1016/j.psyneuen.2019.04.013
Journal of Affective Disorders
巻: 238 ページ: 472-481
10.1016/j.jad.2018.06.018.
https://www.ncnp.go.jp/nimh/behavior/cbmmri.pdf
http://cbm.sakura.ne.jp/emomem/index2.php?type=1