研究課題/領域番号 |
17K00001
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水木 敬明 東北大学, サイバーサイエンスセンター, 准教授 (90323089)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | カードベース暗号 / 暗号系 |
研究実績の概要 |
カードベース暗号は,トランプカードのような物理的なカード組を用いて,秘密計算に代表される暗号機能を身近で手軽に実現するものである。本研究では,このカードベース暗号の研究分野を格段に深化させ,さらなる効率化・実用化や計算限界の学理的解明に取り組んでいる。当該年度に実施した研究の具体的な成果は次の通りである。 新しいプロトコルの開発として,金持ち財産比べという問題に対する秘密計算を実現する,分かり易い効率的な手法を考案し,国際会議COCOA 2018においてその成果を公表した。また,6枚のカードで3変数入力がすべて等しいか否かの秘密計算を行うことのできるプロトコルを開発し,その成果を国際会議ICISC 2018において公表した。さらに,マカロというパズルに対するゼロ知識証明を実現するカードベースプロトコルを開発し,国際会議SSS 2018においてその成果を公表した。 計算限界の解明として,複雑なシャッフルの実現可能性について解析し,Pile-Shifting Scrambleという手法を導入し実現可能なクラスを広げ,成果をIEICE Trans. Fundamentals誌に掲載した。また,昨年度に引き続き秘密計算に必要なシャッフルの回数の上界や下界についての解析を進めた。 実利用への適用について,本年度も本学のオープンキャンパスにてカードベース暗号の実演を行うとともに,一般市民向けのシンポジウムにおいて招待講演を行い,フィードバックを得た。 また,カードベース暗号の知見を応用し,カードの代わりにコインを用いるプロトコルを構成し,身近な道具での秘密計算の可能性をさらに広げた。この成果は国際会議TPNC 2018において公表している。 また,前年度に採録が決定していた国際会議APKC 2018,FUN 2018,UCNC 2018,IWOCA 2018において発表を行い成果を公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した研究目的,すなわちカードベース暗号の深化について,当初の計画通りに進めることができたと判断される。さらに,国際会議FUN 2018において知り合ったフランスの研究者たちと思いがけず共同研究が始まり国際共著論文を出すことができ,また当初は想定していなかったパズルに対するゼロ知識証明に関する研究が進展したり,コインを使ったプロトコルを産学連携により考案するなどし,Lecture Notes in Computer Science (LNCS)とLeibniz International Proceedings in Informatics (LIPIcs)にあわせて9本の論文を当該年度1年間で掲載することができたので,当初の計画以上に進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を踏まえつつ,当初の計画に従い,本研究を推進していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成31年度請求額とあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
|