本年度は、交付申請書の「研究実施計画」に基づき、最も単純なスピングラス模型に対して提案している解析の方法が有効かどうかを検証した。現実的な模型を現段階で扱うのは数学的に困難であり、また当該研究課題の目的には必ずしも必要でないため、このようなアプローチを取っている。
具体的には、ある希釈系スピングラス模型について、その束縛条件と等価な符号化の代数方程式を構成し、情報理論から要請される代数的な制約条件がシステムの物性にどのように影響をあたえるのかを精密な立場から分析した。ここでいう物性とは、スピングラスの巨視的な性質を決定できる少数のパラメータ(秩序変数)の集合を指すと考えて良い。この結果、「研究の目的」で期待していたように、自発磁化と呼ばれる秩序変数の挙動に制限がかかることが数値的に確認された。特に、分析対象となっているスピングラスが西森条件という特殊な条件を満足するとき、本研究のアプローチで非自明な結果が得られることが数値的及び一部は解析的に検証できた。
現在は、連携研究者と連絡を取り合い、数値的に確認された事象を完全に解析的に再現するための諸条件について検討を急いでいる。いくつかの重要な発見は連携研究者からも指摘されており、今後は、この研究体制にさらに研究協力者を加えた布陣で国際会議や学術論文などの成果報告を目指したいと考えている。まずは、研究期間が終了するまでに中間的な報告を実施できないか検討している。
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