研究課題/領域番号 |
17K00010
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松林 昭 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (10282378)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | オンラインアルゴリズム / ページ移動問題 |
研究実績の概要 |
処理すべきデータが1つずつ順々に到着する状況で,データが1つ到着するたびに計算を行なって結果を出力するような計算手順を「オンラインアルゴリズム」と呼ぶ.オンラインアルゴリズムの分野においてよく知られる問題に「ページ移動問題」と呼ばれる問題がある.この問題はネットワークのノードに保持されるページに対するアクセス要求が順々に発生する状況で,ネットワークの負荷を最小化するようにページの保持ノードを計算する問題である.この問題は基本的なオンライン問題の一つとして認識され,長年研究されているが,今なお最適な結果を計算するオンラインアルゴリズムがどのようなものかよく分かっていない.今年度は特にページ数を任意の数kに拡張した「kページ移動問題」について検討した. kページ移動問題に対する良いオンラインアルゴリズムを設計するための手がかりを得るため,オンラインアルゴリズム設計手法の一つである仕事関数を詳細に観察した.また,良いアルゴリズムに対する知見を得るため,探索用計算機を用いてオンラインアルゴリズムとアドバーサリ(アクセス要求列を生成するアルゴリズム)のゲーム木を探索する実験を行なった.現在のところオンラインアルゴリズムの設計には至っていないが,後者の実験から,オンラインアルゴリズムの性能に対するこれまで知られていた上限(それ以上良い性能のアルゴリズムは存在しないという限界)を引き下げられることを示唆する結果を得た. 加えて,昨年度から引き続き研究を行なってきた1ページ移動問題に対して,任意の次元のユークリッド空間上で動作するオンラインアルゴリズムを設計した.このアルゴリズムは,既存の結果を上回り,しかも知られている上限に近い性能を持つ.このことは得られたアルゴリズムがこれ以上は改善できない最良なものに近いことを意味する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画の課題であった「kページ移動問題」に対する結果として,オンラインアルゴリズムの設計には至らなかったが,代わりに従来知られていた性能の上限を引き下げられることを示唆する実験的な結果を得たこと,ならびに昨年度から引き続き実施していた研究に関連して,ある条件で最良に近いオンラインアルゴリズムを設計できたことから,研究はおおむね順調に進展していると評価する.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度得られた,kページ移動オンラインアルゴリズムの性能上限に関する実験結果に基づいて,数学的な証明を試みる. また,ファイル配置問題と呼ばれる,kページ移動問題をさらに一般化した問題について検討し,既存の結果を上回るオンラインアルゴリズムの設計を目指す.特にオンラインシュタイナー木アルゴリズムの観点から検討する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由: 学会の出張費が想定していたよりも少なかったため,次年度使用額が生じた. 使用計画: 次年度の物品費に加えて使用する予定である.
|