研究課題
処理すべきデータが1つずつ順々に到着する状況で,データが1つ到着するたびに計算を行なって結果を出力するような計算手順を「オンラインアルゴリズム」と呼ぶ.本研究課題では,効率的なサーバ・クライアントシステムの設計・運用などを応用とする,ネットワーク上に現れる様々な問題に対して,仕事関数を利用したオンラインアルゴリズムの設計を目指しており,特に今年度は「ファイル配置問題」と呼ばれる効率的にサーバを運用する問題について検討する計画であった.しかし,過去2年の研究期間で,仕事関数を利用する手法について十分な成果が得られているとはいえない状況であった.そこで最終年度では別のアルゴリズム設計手法として,ネットワークをランダムな木ネットワークで近似するという手法に着目し,研究を行った.木ネットワーク上では多くの問題で最適かそれに近い性能を持つアルゴリズムが知られているため,木ネットワークで効率的に近似できるネットワーク上においても最適に近い性能を持つオンラインアルゴリズムが得られる.さらにオンラインアルゴリズムに限らず,最適化問題に対する近似アルゴリズムをも得ることができるため,非常に応用の広い手法として知られている.検討の結果,k-外平面グラフと呼ばれる構造を持つネットワークが,既存の結果よりも少ない歪で(すなわち高い精度で)ランダムな木によって近似できることを明らかにした.この結果は,k-外平面グラフの構造を持つネットワーク上で,「ファイル配置問題」「オンラインシュタイナー木問題」などのネットワーク運用・設計問題に対する,既存の結果を上回る性能を持つオンラインアルゴリズムが得られることを意味する.
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情報処理学会研究報告
巻: 2020-AL-177 ページ: no. 4, pp. 1-8
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