研究課題/領域番号 |
17K00016
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
宮野 英次 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10284548)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グラフ最適化問題 / 計算困難性 / 多項式時間アルゴリズム / 近似アルゴリズム / 近似困難性 / グラフ有向化問題 / ハッピー彩色問題 / 直径限定部分グラフ問題 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,計算困難な組合せ最適化問題を対象として,以下のような手法により適用範囲が広く,高品質なアルゴリズム設計法を構築することである.(条件緩和) 組合せ最適化問題における条件を緩和,または,条件を削除することにより,より一般的な組合せ最適化問題とそれに対するアルゴリズム設計を考え,より適用範囲の広いアルゴリズムを与える.(条件強化)組合せ最適化問題における従来の条件を強化,または,新しい条件を付加することにより,従来より高速または高品質なアルゴリズムを設計する.今年度の主要な研究成果は以下である. 1.無向グラフの有向化問題とはある目的関数の値を最適化するように辺を有向化する問題である.本研究では,目的関数として,得られた有向グラフである頂点から外向きに出る有向辺の重みの合計を考え,最大総重みの最小化を考える.本年度は,p分割のグラフ有向化問題Split-MMOについて検討を行った.ここで,pは指定される非負整数である.p-Split-MMO においては,無向グラフの辺の向き付けを決定する前に,頂点をp 回分割することができる.グラフ有向化問題を負荷分散問題として理解すると,この頂点分割は,既存の計算機群に対して,新たに計算機を追加することに対応する.条件としては,辺の重み,分割回数の大きさを考え,多項式時間計算可能性,NP困難性を示した.研究成果については,国内学会,国際会議等において公表を行った. 2.隣接する頂点のある関係を最適化するように頂点を彩色する問題であるハッピー彩色問題について近似アルゴリズムを提案し,国際論文誌において公表を行った. 3.直径を限定した出来るだけ多くの頂点を含む部分グラフを発見するグラフ最適化問題について,条件強化と条件緩和の点から考察を行った.研究成果については,国際論文誌において公表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画は以下であった.(1) 現実世界に表れる最適化問題の抽出,参考研究や類似研究の調査,従来の組合せ最適化問題の定式化の調査,目的関数と制約条件の検討,アルゴリズム設計方法に関する調査.(2) 従来の組合せ最適化問題の定式化の再検討,および (1) で抽出した現実問題の定式化の検討.(3) 入力例題集合を条件強化することにより部分集合を定義し,多項式時間計算可能な入力例題部分集合と NP 困難な入力例題部分集合を分類.(4) NP 困難な部分集合に対する最適性条件緩和による近似精度保証付きの近似アルゴリズム設計. 本年度は以下について検討を行い,計算困難性の証明,近似アルゴリズムまたは最適多項式時間アルゴリズムを設計することができ,おおむね順調に進展している. 1.無向グラフの有向化問題について,p分割のグラフ有向化問題Split-MMOについて検討を行った.辺重みの無い入力グラフの場合,pの値が定数である場合には多項式時間アルゴリズムを設計することができることを示した.一方,重みグラフについては,pが定数であっても車輪グラフに入力を限定したとしてもNP困難となることを示した.pの条件を緩和するとNP困難となり,カクタスグラフに入力を限定したとしてもNP困難のままであることを示した. 2.ハッピー彩色問題については,これまでよりも良い近似アルゴリズムを設計することができた. 3.直径を限定した出来るだけ多くの頂点を含む部分グラフを発見するグラフ最適化問題については,近似率の意味で最適な近似アルゴリズムを設計することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
これまで順調に進んできており,これまでと同様の手法と手順で研究目標の達成を目指す.従来問題の条件緩和と計算困難性・近似困難性との関係の解明については,証明方法の改良を繰り返しながら進めていくことになる.また,入力例題集合の条件強化についても,多項式時間で計算可能なグラフ部分集合とNP困難なグラフ部分集合の分類を考えながら進めていくことになる.最終年度も情報処理学会アルゴリズム研究会,電子情報通信学会コンピュテーション研究会,LAシンポジウムなどの国内各種研究会に参加することにより,本研究課題の目標を達成するための有益な情報を得る.海外の研究者とも協力しながら本研究課題を推進していく.既に国際会議等で発表している研究成果については,国内論文誌または国際論文誌に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度使用予定額の35万円程度を次年度に繰り越すことになった.当初は,平成30年度末に研究成果の公表を予定していたが,平成31年度の初めになったためである. 平成31年度は,繰り越し分と含めて155万円程度の研究費の費用を予定している.その内訳は,消耗品費として10万円,国内旅費として35万円,外国旅費として80万円,人件費・謝金として10万円,その他として20万円である.消耗品費によりPC関連の消耗品の購入を計画している.国内旅費により関東,関西,九州で開催される計算に関する研究会,学会への参加を予定している.国際会議での研究成果の公表を計画しているため外国旅費が必要となる.大学院生による研究補助,専門知識の提供のために100時間分の謝金,研究成果を国際論文誌に投稿するための論文投稿費用も必要となる.
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