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2020 年度 実施状況報告書

離散最適化に対する固定パラメータアルゴリズムの深化:多項式時間FPTと実用化

研究課題

研究課題/領域番号 17K00017
研究機関大阪府立大学

研究代表者

宇野 裕之  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60244670)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード固定パラメータアルゴリズム / 固定パラメータ容易性 / クラスター編集 / ネットワーク解析 / ネットワーク中心性
研究実績の概要

本研究は,理論計算機科学における計算複雑さおよびアルゴリズム理論の分野で急速な進展を遂げているパラメータ化計算という枠組みのもとで,離散最適化に対する効率的なアルゴリズムの設計技法として確立しつつある固定パラメータアルゴリズム理論を扱っている.その理論がもつ,何らかの特徴をもつ実データに対してアルゴリズムを高速に動作させるという理念に鑑み,理論的な成果を挙げると同時に固定パラメータアルゴリズム研究を実用化の段階へ推し進めることを目的とする.そのもとで4年度目である令和2年度は,前年度までの方針を踏襲し,いくつかの理論的な成果を得るとともに実用的な方向への挑戦を開拓した.
具体的には,まずはじめに理論面からは,グラフ上の遷移問題として定式化されるある種の組合せパズルに対して,その計算困難性や固定パラメータ容易性を示した.実用的な方向では,ネットワーク解析分野で頻出するネットワーク中心性を厳密に計算する問題を扱い,なかでも最も重要である頂点媒介中心性に着目し,アルゴリズムの実装の高速化を試みた.その結果,分解構造が顕著なネットワークに対してはその計算量を劇的に削減することに成功した.
さらには,固定パラメータアルゴリズム分野で基本的な問題の一つであるクラスター編集問題に対する固定パラメータアルゴリズムを実装し,実ネットワークを入力としたときに有効となるカーネル化や有界探索木などの手法を検証した.これは今後,入力データの性質や特徴を踏まえて固定パラメータアルゴリズムを使い分ける新たなアプローチを示唆する可能性があり,そのような方向も見据えて研究を推進している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は,理論計算機科学における計算複雑さおよびアルゴリズム理論の分野で急速な進展を遂げているパラメータ化計算を扱い,理論的な成果を挙げると同時に固定パラメータアルゴリズム研究を実用化の段階へと推し進めることを目指している.4年度目である令和2年度は,新たにいくつかの基本的な問題に対する理論的に重要な結果を得るとともに,それらにより得られた知見をもとに新しい問題に対するパラメータ化高速計算アルゴリズムの提案や実装に着手し推し進めることができた.また新たにある種の遷移問題を提案し,その問題に対する固定パラメータアルゴリズムの開発などを実施した.
一方で令和2年度は,年間を通して新型コロナウイルスの影響を大きく受け,予定していた多くの出張予定がキャンセルとなり,予定していた研究打合せの機会を失うこととなった.また,研究発表などの活動の場が損なわれることになり,その進捗状況は当初の予定よりやや遅れることを余儀なくされている.

今後の研究の推進方策

新型コロナウイルスの影響で進捗がやや遅れていることに鑑み,本研究は計画期間の延長を申請し認められた.そのうえで計画の最終年度となる5年度目は,学生の助力も得ることによりこれまでに得られた成果の実装を強化する.とくに,固定パラメータアルゴリズム分野では代表的かつ基本的な問題である頂点被覆問題については,実ネットワークに対してその問題を解くアルゴリズムを適用する際には,さまざまな新しい問題や挑戦すべき課題が存在することが明らかになったので,その方向に研究を推進していきたい.また,昨年度あらたに着手したクラスター編集問題については,アイデアはあるものの未実装のものがあり,これらの実装も並行して行う予定である.これらと同時に4年度目までの理論的な研究も継続する.たとえば個別の重要問題に対して,それを容易にするパラメータの獲得と選択にも挑戦する.とくに,treedepth と呼ばれるパラメータには引き続き注目しており,このパラメータの性質そのものや,このパラメータを利用した効率的な固定パラメータアルゴリズムの考案や設計を目指す.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響で,複数回の海外出張を含めて当初予定していた多くの出張がキャンセルとなった.またそれらに連動して支出予定であった物品の購入についても滞りが生じた.新年度が始まっても多大な影響が継続しているため,支出困難な状況も継続する可能性がある.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Linear-Time Recognition of Double-Threshold Graphs2020

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Kobayashi, Yoshio Okamoto, Yota Otachi, Yushi Uno
    • 雑誌名

      Lecture Notes in Computer Science

      巻: 12301 ページ: 286-297

    • DOI

      10.1007/978-3-030-60440-0_23

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Gourds: A Sliding-Block Puzzle with Turning2020

    • 著者名/発表者名
      Joep Hamersma, Marc J. van Kreveld, Yushi Uno, Tom C. van der Zanden
    • 雑誌名

      LIPICS (Leibniz International Proceedings in Informatics)

      巻: 181 ページ: 33:1-33:16

    • DOI

      10.4230/LIPIcs.ISAAC.2020.33

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Gourds: A Sliding-Block Puzzle with Turning2021

    • 著者名/発表者名
      宇野裕之
    • 学会等名
      学術変革領域研究(B)組合せ遷移:公開シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Linear-Time Recognition of Double-Threshold Graphs2020

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Kobayashi, Yoshio Okamoto, Yota Otachi, Yushi Uno
    • 学会等名
      The 46th International Workshop on Graph-Theoretic Concepts
    • 国際学会
  • [学会発表] Gourds: A Sliding-Block Puzzle with Turning2020

    • 著者名/発表者名
      Joep Hamersma, Marc J. van Kreveld, Yushi Uno, Tom C. van der Zanden
    • 学会等名
      The 31st International Symposium on Algorithms and Computation
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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