本年度は前年度に研究したマッチングの拡張可能性をグラフの辺着色に一般化し、またハミルトンサイクルをもつグラフの2-因子について研究を進めた。 グラフの辺に色を与えることを、そのグラフの辺着色とよぶ。各色についてその色を与えられた辺の集合がマッチングになるとき、その辺着色は辺彩色とよばれる。Gallaiはこの概念を拡張して、異なる色から成る長さ3のサイクルが存在しないような完全グラフの辺着色を考えた。これはGallai着色とよばれ、様々な性質を持つことが知られている。特に3以上の任意の整数nについて、位数Kが十分大きい完全グラフのGallai着色には、単色の辺から成る位数nの完全グラフが存在することが知られている。2015年にFoxらは、単色の位数nの完全グラフの存在が保証されるような最小のGallai着色の位数Kをnの関数として求める公式を予想した。本研究はこの予想について研究を進め、n=4の場合にFoxらの公式を肯定的に証明した。 一方ハミルトンサイクルを計算量の観点から調べるために、ハミルトンサイクルを持つグラフの2-因子の成分数を研究した。ハミルトンサイクルは1つの成分から成る2-因子と捉えることができる。そこでハミルトンサイクルの存在を仮定した場合に、他の成分数の2-因子の存在がどのように関わるかを調べた。その結果、任意の整数kについて、位数が十分大きい最小次数6以上のハミルトン線グラフには、成分数kの2-因子が存在することを証明した。この結果は、ハミルトンサイクルの存在を仮定すれば、他の成分数の2-因子が存在しやすくなることを示しており、2以上の整数kについて、グラフに成分数kの2-因子の有無を問うことと、ハミルトンサイクルの有無を問うことが同程度に難しいことを示唆している。 以上のように本年度の研究も本課題研究の目的の沿った多くの知見を得ることができた。
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