研究課題/領域番号 |
17K00019
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
和田 幸一 法政大学, 理工学部, 教授 (90167198)
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研究分担者 |
DEFAGO Xavier 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (70333557)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自律分散ロボット / 非同期 / 集合問題 / ライト / 自己安定 |
研究実績の概要 |
従来の自律分散ロボット群モデルにロボットがライト(状態)を搭載することによる計算能力の限界を明らかにした.特に,ライトが自身と他のロボットがともに認識できる場合(full-light),他のロボットのみが認識できる場合(external-light)に対して,ライトの色数最小のランデブーアルゴリズムを開発した.また,ロボットの動作仮定に関して,移動位置まで必ず到達する場合(rigid),必ずしも移動位置まで到達しない場合(non-rigid)を考慮している.non-rigidの場合は全く移動しないと問題が解けなくなるため,最小移動距離(δ>0)は移動するものと仮定している.このδの値をロボットが知っている場合(non-rigid+δ)も考察している.具体的に得られた成果は以下の通りである.
(1) ロボットが非同期に動作する(ASYNC)とき,ランデブーはnon-rigid+δを仮定した場合,2色のfull-lightで解ける.非同期を少し制限したモデル(LCatomicASUNC)の場合,ランデブーはnon-rigidの下で2色のfull-lightで解ける.
(2) アルゴリズムの動作をライトの状態だけで決定するアルゴリズムをL-アルゴリズムと呼ぶ.L-アルゴリズムを用いた場合は,ASYNCにおいては任意の色数を持つexternal-lightを用いてもランデブーは解けないことが示されていた.ここでは,LC-atomic ASYNCにおいて,external-lightにおける色数最適なL-アルゴリズムが構成できることを示した.特に,非自己安定,擬似自己安定,自己安定のそれぞれの場合について,色数が最適なL-アルゴリズムを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自律分散ロボット群の理論モデルの構築のためのCPSの分析の結果,自己安定性,自律適応性はこのモデル構築に関して,最重点項目である.動的に変化する環境の下での自律的な秩序形成・機能発現のための進化・適応能力を有するシステム・現象(創発システム,創発現象)に関して十分な検討を行ってきた.それらの解明の糸口として2018年度明らかにした結果をさらに推し進め,特に,ロボットがロボットの状態のみで動作を決定するL-アルゴリズムはロボットが持つ座標系がいつも正しいとは限らない場合にも正しく動作できる重要なアルゴリズムであるL-アルゴリズムに関して,新しい知見を得た.ロボットが持つライトがexternal-lightの場合,非同期な状況(ASYNC)では色数をいくら用いても,2台のロボットの集合問題(ランデブー)さえ解けないことが分かっている.ここでは,非同期を少しだけ条件を付けた場合(LC-atomic ASYNC),external-lightを持つロボットのランデブー問題が自己安定に動作する場合としない場合において必要な色数が異なること,また,その色数が最適であることを示した.これらの結果はCPSを取り入れた新しい自律分散ロボット群のモデル化に有用であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
CPSを取り入れた自律分散ロボット群の理論モデル化をするにあたり,さらに検討を加える.特に,これまで解明されている創発現象や創発システムをCPS とみなした時,CPSにとって本質であるものはなにかを明らかにする.また,CPSにおいては,動作する物理環境に依存してソフトウエアだけなく,ハードウエア,オペレータや利用者ともインターフェースをもつので,CPSのシステム境界をどのように定めるかによって,問題設定がかわるため, これらも意識しながら,分析をしなければならない.引き続き自律分散ロボット群に対する理論モデルの構築を意識しながら,CPSを分析するために必要な調査と考察,従来の分散モデルをCPSとしてとらえたときの問題点の解明を引き続き行う.
また,平成29-30年度に得られたライトを搭載したロボットに対するアルゴリズムをさらに推し進め,ランデブーだけではなく3台以上の集合問題を含む様々な問題に対するアルゴリズムの開発を行うが,CPSを取り入れたモデル化に有用な結果をめざす.特に,ロボットが搭載するライトの種類(full, external, internal)により問題解決能力がどのように変わるのか,自己安定性,自己組織化を如何にロボットモデルに散りこむか,任意の故障(ビザンチン故障)に耐性のあるアルゴリズムの開発を重点的に行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際会議への出席をしなかったため,2019年度開催の国際会議に出席予定である.
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