研究課題/領域番号 |
17K00020
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
新家 稔央 東京都市大学, 知識工学部, 講師 (30247225)
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研究分担者 |
八木 秀樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (60409737)
細谷 剛 東京理科大学, 工学部情報工学科, 講師 (60514403)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 判定帰還方式 / 誤り指数 / Shulman-Feder上界式 / 線形符号 / LDPC符号 / 判定基準 / レギュラー通信路 / DS2上界式 |
研究実績の概要 |
情報理論(通信路符号化)の分野では,従来,誤り指数(error exponent)によって表現される符号化定理が研究されてきた.誤り指数が導出できれば,同一の情報伝送速度のもとで,復号誤り確率と計算量の関係を明確にすることが可能となる.本研究では帰還通信路を用いた判定帰還(ARQ)方式において,LDPC符号など符号クラス,通信路・復号法・判定帰還方式の判定基準を与え,誤り指数の導出および有限の符号長における誤り確率上界の導出を試みる.そして,精密に誤り確率を評価した結果を踏まえ,帰還通信路を用いることによって可能な復号計算量削減の効果が,従来研究よりも大きくなることを明らかにする.計算量の削減効果は携帯端末の消費電力の低減を評価する意味で重要である. 本年度は,Hofら[HSS10]のGD-SF上界式が2つのパラメタについて最適化を施した上界式ではなかったことに着目し,我々は2つのパラメタについて最適化を施した上界式に改良した.そして,この成果をさらに「レギュラー通信路と完全重み分布を与えたq元線形符号」への拡張した.ここで,q元線形符号への拡張は,フラッシュメモリの多値化による大容量化を想定した場合に重要な問題である.また,MPSKなどの変調方式を用いて通信を行う場合にも有効なモデルである. [HSS10] E. Hof, I. Sason and S. Shamai (Shitz), ``Performance bounds for erasure, list, and decision feedback schemes with linear block codes," IEEE Trans. Inform. Theory, vol.IT-56, no.8, pp.3754--3778, Aug. 2010.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度,我々は従来の上界式を2つのパラメタについて最適化を施した上界式に改良し,この成果を「レギュラー通信路と完全重み分布を与えたq元線形符号」への拡張した.その結果は,電子情報通信学会論文誌A(英文誌)に採録決定となった.また,次年度の研究テーマについても,すでに着手している.そのテーマは,Forneyとは異なる判定基準を用いた場合の誤り確率の上界式の評価についてである.現在まで,[Hashimoto99]で提案された判定基準の利用を視野に入れ,準最適な判定基準を用いた場合について[Forney69]の誤り指数が達成できることを線形符号に対して示せており,国際会議にて発表することを準備中である. [Hashimoto99] T. Hashimoto, ``Composite scheme LR + Th for decoding with erasures and its effective equivalence to Forney's rule,'' IEEE Trans. Inform. Theory, vol.45, no.1, pp.78--93, Jan. 1999.
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今後の研究の推進方策 |
[HSS10]では,[YI80]で利用された準最適な判定基準を用いた場合についても誤り確率の上界を求めている.しかし,[Hashimoto99]の結果から,この式はタイトでないと予想される.一方,[Hashimoto99]では新しい判定基準を与えて,畳込み符号を用いた判定帰還に対するタイトな誤り指数を求めた.そこで,本研究でも判定基準を変えたアプローチで誤り確率を評価したい.まずは,[Hashimoto99]で提案された判定基準の利用を視野に入れ,準最適な判定基準を用いた場合について[Forney69]の誤り指数を達成することを,線形符号に対して示すことを目標とする.なお,準最適な判定基準は,LP復号法のような「最尤の符号語のみが出力される復号法」と判定帰還方式を組み合わせる場合に有効と考えている.なお,上界式の導出が滞った場合には,シミュレーションによる評価も視野に入れて研究を進める. [YI80] H. Yamamoto and K. Itoh, "Viterbi decoding algorithm for convolutional codes with repeat request," IEEE Trans. Inform. Theory vol.IT-26, no.5, pp540-547, Sep.1980.
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次年度使用額が生じた理由 |
査読付き論文の採録決定までに時間を要したためである.当該の論文は,採録決定となっており,30年度にその別刷り代が必要である.また,所属先の東京近郊で学会が多く行われ,当初の見積もりよりも旅費が少なくなった.
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