研究課題/領域番号 |
17K00024
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
朝廣 雄一 九州産業大学, 理工学部, 教授 (40304761)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 組合せ最適化 / アルゴリズム / 計算複雑さ |
研究実績の概要 |
本年度は,平面上を移動できるロボット群の隊列形成問題について研究した.考察対象のロボットは,識別子を持ち,観察により他ロボットを認識でき,かつ自由な方向に移動できるものである.ただし,一時刻あたりに移動できる距離には上限がある.この問題においては,ロボットの初期位置は任意であり,その初期位置から移動することによって,目標の隊列を形成することがこの問題の目的である.平面上のロボットの位置の集まりを一つの状況と捉え,それをグラフ中の頂点に対応づける.目的とする隊列も一つの状況であるので,そのグラフ中の一つの頂点に対応する.そのためロボット群の移動に伴う状況の変化の列を,グラフ中の点列で表現できる道と捉えることができる.ロボットたちは毎時刻動けるわけではなく,ある種のスケジュールに従って,起動し移動を行う.そのため,ロボットが起動されるスケジュールによって,このグラフ上で頂点間の遷移が一部不可能になったりするという構造の変化が起こる.このような状況下で,全ロボットが毎時刻起動されるスケジュールと,各時刻では予測不可能な一部のロボットのみ(全部もあり得る)起動されるスケジュールを考慮した.そして,目標の隊列に確実に到達し,かつ,その途中段階の隊列の質が確実に改善する(途中で悪化することはない)ようなアルゴリズムを提案した.以上の研究成果を査読付き国際学術雑誌 Theoretical Computer Science 誌において発表した. さらに他の問題として,辺に向きの付いていないグラフにおいて,向き付けを行うことで,ある種の指標について最適化を行う問題について検討を行った.得られた研究成果は,査読付き国際会議に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績の概要欄に記載の通り,査読付き国際学術雑誌への研究成果の公表を行うことができたので,成果としては十分なものが得られたと考えている. 新型コロナウィルスの感染拡大が収まらなかったために,前の数年度と同様に,研究活動において様々な制限を受けた.例えば,出張を制限されていたために,共同研究者との議論はオンラインミーティングに頼らざるを得ず,対面での議論よりも不便さを感じた.また,学会や研究会については対面で開催されるものへは出張が制限され,また,オンラインで参加することを理由に授業を休講にはしにくいため,特に時差の存在する国際的な研究集会への参加は難しかった.このため最新の研究動向を理解し,それを踏まえた研究活動を行うという点,ならびに初期の研究成果を当該分野の研究者に公表し意見を聴取することで,研究の進展を図るという点が若干不十分であったと考えている. 以上のように,査読付き国際学術雑誌への研究成果の公表は順調に行えたが,新型コロナウィルスの感染拡大に伴う研究環境の変化にうまく対応できなかったと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本書類の執筆時点では,新型コロナウィルスの5類移行が計画されており,社会全体としてウィズコロナ生活へ進んでいるようである.これに伴い,所属研究機関でも出張が可能となった.そのため,この数年間で見合わせてきた,研究集会への参加を再開し,特に研究成果の対面での公表を行っていきたい.ただし,オンライン上でも様々な活動が可能なことが分かってきたので,オンラインでの活動も組み合わせて,成果を挙げられるよう工夫したい. 新型コロナウィルスとは別に,研究の内容としては,マスコミに取り上げられるようなインパクトがありセンセーショナルな研究成果を目指すのではなく,研究活動に真摯に取り組み,学術の発展に微力ながら貢献するという意識でいることを心掛けたい.最終的には国際会議や国際学術雑誌で公表できるような質の高い研究成果をあげることが目標ではある.しかしながら,そう一足飛びにはいかないので,その前段階として国内の研究発表の場での,本研究課題の初期段階の成果の公表を心掛けたい.それにより他者からの意見や評価を取り入れることが出来ると思われるので,それらを踏まえて研究内容の質の向上を図りたい.具体的には,LAシンポジウム,情報処理学会アルゴリズム研究会,電子情報通信学会コンピューテーション研究会などを対象として,研究成果の公表を行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,研究成果を公表するための学会等へ参加するための出張と,共同研究者との打ち合わせのための出張など,主に移動を伴う活動が制限されたため,それらのために支出する予定だった分の額が残った.そのため,次年度に研究成果の公表や共同研究者との打ち合わせを実施するために,次年度使用額として残すこととした.
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