研究実績の概要 |
有限文脈特性(Finite Context Property, FCP)を弱めた条件を満たす文脈自由文法によって生成される言語のクラスについて調べた。 FCPは,文法が生成する言語Lに対して,{ x | すべての(u,v) ∈ Cについて,uxv ∈ L }の形をした集合を非終端記号に当てはめて文法規則の正しさを規定するものである。(ここで,Cは文字列のペアの有限集合である。)このかわりに,{ x | すべての(u,v) ∈ Cについて,uxv ∈ Lであり,かつすべての(u,v) ∈ Dについて,uxv ∈ Lでない }の形をした集合(C, Dは文字列のペアの有限集合)を用いると,より広い言語のクラスを捉えることができ,この言語のクラスは,FCPの場合とまったく同様に正例と所属性質問を用いた学習アルゴリズムによって学習可能であることが示せる。 有限集合CとDの要素の数をそれぞれ高々kとlに限定して得られる言語のクラスをFCP(k,l)とする。FCP(k,0)が従来のk-FCPに相当する。k-FCPがkに関して階層をなすように,FCP(k,l)は,lに関して階層をなす,つまり,FCP(1,l+1)に属し,どんなkについてもFCP(k,l)に属さない言語が存在すると予想したが,今のところ,この予想のl = 0の場合しか証明できていない。kを1に固定した場合は,l=2のクラスとl=1のクラスが分離できることはわかったが,これを示すのに用いた手法は一般の場合に拡張できないこともわかった。
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