研究課題/領域番号 |
17K00028
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
垣村 尚徳 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30508180)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 組合せ最適化 / 近似アルゴリズム / ストリーミングアルゴリズム / 劣モジュラ関数 / コミュニティ検出 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き,大規模なネットワークを解析するために,制約付き劣モジュラ関数最大化問題に対するストリーミングアルゴリズムの設計に取り組んだ.(シングルパスの)ストリーミングアルゴリズムとは,各データを一度しか見ずに解を計算するものであり,メモリ効率が高くデータが大規模な場合に有用である.2017年に本研究課題において,ナップサック制約のもとで単調劣モジュラ関数を最大化する問題に対してストリーミング近似アルゴリズムを設計した.今年度は,その近似比を,計算時間の効率性を保ったまま,0.363から0.4に改良することに成功した.この結果はアルゴリズムとデータ構造に関する査読付き国際会議WADSに採択され,口頭発表をおこなった. また,ボストン大学のCharalampos Tsourakakis 氏とその学生との共同研究により,不確実性を有するグラフに対する最密グラフ問題に対する効率的なアルゴリズムを設計した.最密グラフ問題は,ネットワーク内のコミュニティを検出するための組合せ最適化モデルであり,多項式時間で計算が可能である.本成果では,不確実性をもつグラフに対する最密グラフ問題がNP困難であることを示した.そして,負の辺重みをもつ最密グラフ問題に帰着することで,高速なヒューリスティックスを提案した.また,データセットを用いた計算機実験により提案アルゴリズムの有効性を確認することができた.本成果はECML-PKDDという機械学習・知識発見分野の査読付き国際会議に採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究を発展させ,ナップサック制約付き劣モジュラ関数最大化という組合せ最適化問題に対して,ストリーミングアルゴリズムの近似比の改良に成功した.また,不確実性を有するネットワーク内でコミュニティを検出するための組合せ最適化モデルを提案することができた.よって計画は順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き,劣モジュラ関数最大化問題に対して,その計算限界の解明に取り組む.計算時間の改善や近似比の下界の解明などの理論的な検証,そして,提案アルゴリズムの実用性の確認など,共同研究者と協力しつつ引き続き研究を推進する.また,ネットワーク内のコミュニティ構造を見つけるための組合せ最適化モデルについて,より現実に近い状況が扱えるように提案モデルを改良し,高速・高精度な計算手法の設計に取り組む.そのための情報収集や研究討論を目的として,国内外の研究集会への参加や共同研究者の招へいまたは訪問を計画している.また,研究の過程で得られた理論的成果,実験結果に関する情報交換を行なうために,国内外の研究会等で発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により出張計画のキャンセルが複数あり,さらに招聘予定の海外研究者の都合により招聘が中止となったため未使用額が生じた.来年度は本研究課題の最終年度であるため,研究成果の発表のための国内外の学会への参加を計画している.また,情報収集や研究討論を目的とした国内外の研究集会への参加や,来年度後半に状況が改善されれば,共同研究者の海外からの招聘を計画している.学会等がオンラインで行われる場合は,学会参加のための費用は学会参加費のみとなる.
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