研究課題/領域番号 |
17K00028
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
垣村 尚徳 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30508180)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組合せ最適化 / アルゴリズム / ストリーミングアルゴリズム / 劣モジュラ関数 / マトロイド / マッチング |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,大規模なネットワークを解析するための基本的な問題のひとつである,制約付き劣モジュラ関数最大化問題を扱い,この問題に対するストリーミングアルゴリズムの計算複雑度の解析に取り組んだ.昨年度に,制約付き劣モジュラ関数最大化問題に対する近似不可能性と空間複雑度との関係の解明に取り組み,入力データがストリームとして与えられメモリが制限されている状況において,0.585近似よりよい近似比を達成するアルゴリズムが存在しないことを示した.この成果は,本年度に論文改訂を経て査読付き論文誌SIAM Journal on Discrete Mathematicsに採択された.また,組合せ最適化における基本的な概念であるマトロイドに関連して,買い手が動的に市場にやってくる組合せ市場での価格付け問題に取り組み,昨年度に得た成果を改善したものが査読付き論文誌SIAM Journal on Discrete Mathematicsに掲載された.さらに,二部マッチングマーケットにおいて,エージェントが確率過程にもとづき出入りする場合に,貪欲アルゴリズムなど基本的なアルゴリズムの漸近的性能と各エージェントの待ち時間との関係を解明した.この成果は,ウェブとインターネット経済に関する査読付き国際会議The 17th Conference on Web and Internet Economics(WINE)に採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究を発展させ,制約付き劣モジュラ関数最大化に対するストリーミングアルゴリズムの近似不可能性の解析や組合せ市場における動的な価格付けに対するアルゴリズム設計に取り組み,成果として査読付き論文誌に掲載された.また,二部マッチングマーケットの漸近的な性能を明らかにすることができた.よって計画は順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き,制約付き劣モジュラ関数最大化問題やマッチングマーケットに関連する組合せ最適化問題に対して,その計算限界の解明に取り組む.計算時間の改善や近似比の下界の解明などの理論的な検証,そして,これらの知見の実用上有用な問題への適用などについて,共同研究者と協力しつつ引き続き研究を推進する.当初の予定では2020年度が最終年度であったが,COVID-19の影響により,共同研究者との研究打合せの計画に遅れが生じている.この遅れを取り戻すために,研究成果発表や研究討論を目的として,国内外の研究集会への参加や共同研究者の招へいまたは訪問を計画している.また,研究の過程で得られた理論的成果,実験結果に関する情報交換を行なうために,国内外の研究会等で発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響が予想以上に長期化し,海外研究者の招聘が中止となり国内外の学会のほとんどがオンライン開催となったため,出張計画の変更を余儀なくされた.そのため未使用額が生じた.来年度は,研究成果発表や研究討論を目的とした国内外の研究集会への参加(オンラインまたは現地)や,共同研究者の海外からの招へいを計画している.
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