研究課題/領域番号 |
17K00031
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
村松 正和 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (70266071)
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研究分担者 |
高橋 里司 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40709193)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 錐線形計画 / 対称錐 / 半正定値計画 / 射影&再スケーリングアルゴリズム / 条件数 |
研究実績の概要 |
令和元年度に行なった本プロジェクトに関する研究は以下の通りである。
1 Chubanov が提案した、オラクルと射影とスケーリングを用いて同次 LP の許容解を求める多項式アルゴリズムを半無限計画に拡張し、論文にまとめものについて、半正定値計画問題に限って実装し、数値実験を行なった。このアルゴリズムは、本プロジェクトにおいてすでに研究した「射影とスケーリングを用いたアルゴリズム」と精神は似たところがあるが、異なるものである。このアルゴリズムは、許容領域の「体積」を条件数として反復回数を評価する。この条件数が小さいと反復回数が大きくなる構造になっており、特に条件数がゼロの場合は本プロジェクトのメインテーマである面削減法を適用すべき状態となっている。つ 2 本プロジェクト発足時に研究していた Chubanov の最初のアルゴリズムを対称錐へ拡張したものを、1と同様に実装し、比較検討を行なった。結果として、どちらのアルゴリズムも理論が予測する通りに動くこと、また、理論よりあまりよくはならないことが観察された。例えば単体法や内点法は理論よりはるかに効率的にLPを解くことが知られており、楕円体法は理論どおりにしか動かないこと(従って実用とならないこと)が知られているが、Chubanov のアルゴリズムはちょうどこの中間に位置すると考えられる。 3 2つのアルゴリズムがそれぞれ得意・不得意とする問題がはっきり分かれることが観察された。これは両者が扱う 条件数の定義が異なることに起因する。一方に極端に不得意な問題をある方法で生成すると、もう一方には極端に易しくなってしまう、という現象を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前々年の実績報告書でも報告したとおり、元々の研究計画である Ramana の双対問題に関する研究から少し離れ、Chubanov による新しいアルゴリズムに関する研究を行なった。これは当初予期していなかったことであるが、大きな枠組みとしては錐線形計画と双対性に深く関連しており、妥当な研究内容と言える。 また、Chubanov による2つのアルゴリズムの拡張は、どちらも反復回数が条件数に依存しているが、条件数の定義が異なる。ある種の SDP は一方の条件数がゼロに近いが、もう一方の条件数は1に近い、というようなことがあることが観察された。このような問題に関して理解を深めることが、誤差解析に対する理解を深めることと関連する可能性がある。その意味で、おおむね順調に進展していると考えられる。 ただし、この結果を国際会議で発表しただけで論文にまとめていないのは反省点である。
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今後の研究の推進方策 |
上記のような条件数の不思議について、もう少し調べてから発表したいと考えている。ただし、現在新型コロナウイルスにより活動が抑えられており、どのくらい実現できるかはわからない。 他にも本研究から生まれた芽はいろいろあるが、それらについては次の基盤研究Bにおいてゆっくり行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月以降開催されるいくつかの学会で研究成果を発表する予定であったが、コロナの影響ですべてキャンセルとなった。次年度の使用に関しては、やはり研究成果発表に用いる。ただし旅費だけでなく、近年は Zoom などでの遠隔での発表が増えていることを鑑み、それに必要なタブレット、ソフトウエア等の購入に充てることも考える。
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