研究課題/領域番号 |
17K00037
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
森口 聡子 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (60407351)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 離散凸解析 / 離散凸関数 / 整凸関数 / スケーリング |
研究実績の概要 |
離散最適化に対して,スケーリング技法を軸とするアルゴリズム効率化のための理論体系を構築することを目的とし,研究を推進した.スケーリングとは,定義域の偶数点のみを見る,などのように,目盛を間引いた関数近似の導入で効率化を図る技法で,古典的なネットワークフローや資源配分問題で多くの成功例が知られている.離散凸解析のこれまでの研究により,いくつかの離散凸関数最小化に対して,スケーリング技法の有効性と近接定理による理論保証が明らかになっている.本研究では,これまでスケーリング技法や近接定理について考えられていなかったより広い離散関数のクラスに対する拡張と理論構築を試み,効率的なアルゴリズムが構築可能なクラスの解明を進めていった.離散凸性判定については,スケーリング技法に基づいた効率化を試みた. 多くの離散的な凸関数を含む関数クラスとして知られている整凸関数は,スケーリングに関して閉じておらず,近接定理についても近接上界が多項式性をもたないことを明らかにした.そこで,L凸関数と整凸関数の中間に位置する関数クラスとして,離散中点凸関数の概念を考案した.この関数族の性質を精査し,この関数族が平行四辺形不等式を満たすこと,2近傍最小性判定が有効であること,スケーリングについて閉じていること,次元に関して線形の近接上界をもつことを示し,これに基づいて,離散中点凸関数の最小化アルゴリズム,2近傍最急降下法とスケーリング近接法を設計した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,離散最適化に対して,スケーリング技法を軸とするアルゴリズム効率化のための理論体系を構築することを目的とし,様々な分野への発展を視野に入れている.具体的には,以下の通り研究を推進し,研究成果を発表し,おおむね順調に研究が進展している. 離散凸性の一般化や,L凸関数やM凸関数を包含するクラスである整凸関数に関する研究を推進した,また,L凸関数と整凸関数の中間に位置する関数クラスとして,離散中点凸関数の概念を考案し,この関数族の性質を精査し,これに基づいて,離散中点凸関数の最小化アルゴリズム,2近傍最急降下法とスケーリング近接法を設計した.その一部については学会や論文誌で発表済みである. 様々な分野への発展に寄与し得るソフトウェアの整備については,継続的に,離散凸関数の応用に関するデモンストレーションを整備してWeb上に公開してきた.Web上の文書の英語化も行った. 以上より,現在までの進捗はほぼ予定通りであり,研究計画は順調に進展していると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き,離散凸構造を有する色々な関数クラスとスケーリング近接性の関係を精査する. 特に,新しいクラスである離散中点凸関数に対するアルゴリズムについては,重点をおいて研究とソフトウェア開発を進める予定である.ソフトウェア開発,公開に関連する部分では,ユーザーにとっての使い勝手に気を配りつつ推進する予定である. 離散凸性判定の効率化に関する新しいアイデアの実装についても,早急に完成度を上げたい.各種離散凸関数に対する基本演算について,これまで明らかになっていなかった点を整理し,結果を解明していく.その都度,成果を学会や論文誌で発表していく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に伴い,当初予期し得なかった新たな最小化アルゴリズムに関する知見が得られた.これに基づいたより高度な研究成果を得てから,研究成果発表を行うこととした.その結果,今年度(H29年度)に想定していた旅費は,予定額より少なくなった.また,本年度のデータ処理は,新たな機器を導入する必要なく,人件費をかけずとも行える範囲に収まり,物品費,人件費が抑えられた. 以上,研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額に差異が生じた. 次年度(H30年度)に請求する研究費と合わせて,旅費および物品費に充当する予定である.
|