統計科学分野のカテゴリーの1つである『ノンパラメトリックな関数推定』に対して『境界バイアス問題のない非対称カーネル密度推定』を開発し、その体系を整備すること及び提案した密度推定量の漸近性能(バイアス・分散・漸近正規性など)を解明することに焦点をおき、今年度は以下のような成果を得た。 (1)非対称カーネル密度推定に対する積型バイアス修正の成果を公表した(国際的な専門雑誌Computational Statistics and Data Analysisnに掲載済み)。他方で、非対称カーネル密度推定量に対する加法型・非負型バイアス修正の多くの研究はp=2に相当するから、それをp=2よりも大きな自然数pへと一般化した。特に、3種類のバイアス修正法について高次の漸近性能を解明して、それを検証するための数値実験を実施し、『バイアス修正法』を体系的に整備した。 (2)非対称カーネル法を近年に先ず、単変量の密度関数推定の文脈で議論してきたが、その流れは他のノンパラメトリックな関数推定の話題へも展開できるとして、多次元の密度関数推定に関し、相関のある非心バーンバウム・サンダースカーネルによる密度推定法の研究成果が統計学の国際的な専門雑誌Journal of Statistical Planning and Inferenceにアクセプト済みとなった。また、密度比・条件付き密度推定の研究を開始した。他に、ハザード比関数の推定も該当するから、それに関連する文献調査をした。 (3)非対称カーネル密度推定量は従来、非再帰的に定式化されていたが、データが多量に逐次的に追加されていく状況下において計算コストの意味で効率的である、『再帰的な非対称カーネル密度推定』にも取り組み、非再帰版に対する再帰版の漸近性能を解明、及び、諸結果を検証するための数値実験を実施した。
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