本研究の目的は、がん分子標的薬の長期毒性データに基づく新規ベイズ流用量探索デザインの研究開発である。米国National Cancer Insititute (NCI)の生物統計家等と共同して、分子標的薬の長期的な有害事象の発現状況を調査し、論文発表した。本研究からは、第1サイクル目以降もグレード3以上の毒性が一定の頻度で発現していることが分かり、本研究の目的である長期毒性を考慮した用量探索法の必要性が実データに基づいて裏付けられた。また、NCIの生物統計家等とは、細胞障害薬,分子標的薬、免疫治療,及びこれらの併用療法における毒性プロファイルを分析する研究も並行して進めている。これらの研究成果を基に、分子標的薬のための用量探索法を3つ新規に開発した。いずれもベイズ流デザインに基づく方法であり、既存のデザインよりも性能が高いことがコンピュータシミュレーション実験により示された。また、研究期間中に、主としてがん領域においてマスタープロトコル試験の概念が提唱され、バスケット試験、アンブレラ試験、プラットフォーム試験と呼ばれる新たな試験デザインが注目されるようになった。本研究においては、マスタープロトコル試験に関するレビューを行った。さらに、ベイズ流バスケット試験に焦点を当て、がん分子標的薬のベイズ流用量探索デザインで得られた成果を活用しつつ、新規デザインの研究開発を行った。
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