本課題は、応用統計学の重要な分野の1つである実験計画法における諸問題に、計算代数手法を用いることで、新たな知見や結果を得ることを目標としている。本課題の研究期間に取り組んだ主要なテーマは、複数の多水準因子に対する繰り返しのない実験計画に関するものである。この設定における伝統的な実験計画法の理論は、因子の水準が2水準、3水準の場合のレギュラーな一部実施計画について、その構成法や解析の方法論を整備することに注力されてきたという側面があり、一方で、一般的な設定における研究には未解決な問題が多い。本研究課題で取り組んだ方法は、繰り返しのない計画をゼロ次元多様体とみて、計画上の応答空間を考え、その代数構造を研究するというものである。本研究で得られた結果のうち重要と思われるのは、計画上の指示関数を多項式関数として構成し、その性質を研究することにより、与えられた性質をもつ一部実施計画を与えられたイデアルの零点として導くための方法論を構築したものである。この定式化により、理論上は、代数方程式の形で性質が定義できるような一部実施計画をイデアルの零点として列挙することが可能となる。一方で、実際の計算のために様々な数値代数幾何の手法を適用することが必要となり、本課題では準素イデアル分解を利用した代数計算の方法を提案した。最終年度には、その前年度に成果を得た、非直積型の内側・外側配置の問題に関して、提案した配置により得られる実験計画データの解析手法の整備、計画の性質等を研究した。
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