研究実績の概要 |
線形な変化係数は時間とともに変化する回帰係数の記述に有用なだけでなく、空間データの記述にも利用できる。冨田・佐藤他(応用統計学, 2010)では、従来、平滑化が使われてきた地理的加重回帰と対比させながら、空間データへの適用を提案した。また、Tonda, Satoh他 (Radiat. Environ. Bioph., 2012)においては広島原爆被爆者の死亡危険度を変化係数曲面をCox回帰モデルにおいて推定し、被爆時所在地の効果を示した。そして、Satoh & Tonda (JJSS, 2014)では空間データに対してセミパラメトリックな変化係数曲面の推測を提案し、Tonda & Satoh他(J. Epidemiol., 2015)ではがん死亡データにおいて年齢と時代の変化係数曲面を考えることでコホート効果の検出方法を提案した。さらに、Satoh & Tonda (AJMMS, 2016)では経時傾向を局外パラメータとして扱うことで、新たに、線形、セミパラメトリックに続くノンパラメトリック推定の手法を確立した。これに加えて, Satoh, Tonda他(AJMMS, 2016)では、 生存時間データにおいてハザード比の代わりにオッズ比の推定を行う手法をロジスティック回帰モデルによって提案している。そして、昨年度は、T. Tonda and K. Satoh (JJSS, 2017)において、時空間データに対して、ベースライン曲線を関数形を特定しないまま興味ある説明変数の効果が推定できるノンパラメトリックに推定する方法を提案した。また、今年度は、K. Satohら(Radiation Protection Dosimetry, 180, 1-4, 346-350, 2018)が放射線線量評価の雑誌に公表された。また、統計解析を利用した論文として、Radiation Research, 190, 424-432, 2018, 並びに、Journal of Radiation Research, 59, 2, 83-90, 2018も公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、時空間データに対してノンパラメトリックな変化係数の推測方法を提案し、生存時間データへ応用することを目的としている。研究は次の3段階で行うことを計画している。①時空間への拡張 Satoh & Tonda (AJMMS, 2016)の経時測定データに対して提案されたノンパラメトリックな変化係数の推測を時空間データ(位置情報を持つ経時測定データ)へ拡張する。②地域集積性の検出 Tonda & Satoh他(J. Epidemiol., 2015)で提案されたコホート効果の検出方法を上記の時空間解析に適用し、有意性などを評価できるようにする。③生存時間解析への応用 時空間上の地域集積性の検出方法をSatoh, Tonda他(AJMMS, 2016)などの生存時間回帰モデルへ応用し、そして、広島原爆被爆者データへ適用する。そのうち、①については、時空間への拡張をT. Tonda and K. Satoh (JJSS, 2017)において、時空間データに対してノンパラメトリック推定法を提案し、③の生存時間解析を行ううえで必要な線量評価に関する基礎研究をRadiation Protection Dosimetry, 180, 1-4, 346-350, 2018に公表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、②地域集積性の検出:Tonda & Satoh他(J. Epidemiol., 2015)で提案されたコホート効果の検出方法を上記の時空間解析に適用し、有意性などを評価できるようにする、③生存時間解析への応用:時空間上の地域集積性の検出方法をSatoh, Tonda他(AJMMS, 2016)などの生存時間回帰モデルへ応用し、そして、広島原爆被爆者データへ適用する、を挙げている。今年度は、この他にもRadiation Research, 190, 424-432, 2018、あるいは、Journal of Radiation Research, 59, 2, 83-90, 2018など③の放射線に関する論文などの成果を上げている。③の実データの解析には様々な知識が必要となるため、積極的に医学関連データの解析にも取り組みたい。
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