研究課題/領域番号 |
17K00053
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大西 俊郎 九州大学, 経済学研究院, 教授 (60353413)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Bayes予測 / ダイバージェンス / Tweedie分布 / 共役事前分布 |
研究実績の概要 |
理論研究として,前年度に引き続き,α-ダイバージェンス損失関数の下でのBayes予測を研究している.これは東京大学の丸山祐造教授との共同研究である.推定問題の拡張である,確率分布の推定問題は予測問題と呼ばれる.これをBayes統計学の枠組みで行うのがBayes予測問題である.α-ダイバージェンスと呼ばれる確率分布間の乖離度を用いて予測の良さを測るとき,優れたBayes予測分布を導くための条件を調べた.この研究成果はジャーナルに投稿中であり,現在,リバイスしたものが査読されている. もう1つの理論研究として,Jeffreys事前分布を用いた共役解析を研究している.これは統計数理研究所の柳本武美名誉教授との共同研究である.Jeffreys事前分布は,事前情報がないときに仮定される代表的な事前分布である.事前分布と事後分布が同一の関数形をもつとき,その事前分布は共役事前分布と呼ばれ,役事前分布を用いたBayes解析が共役解析である.この研究では,Jeffreys事前分布の特徴づけを行うとともに,尤度を用いた推論への含意を明らかにしている.研究成果を国際研究集会で発表した. 応用研究として,Tweedie分布における経験Bayes推定を行った.これはサンシャインコースト大学(オーストラリア)のPeter Dunn准教授との共同研究である.Tweedie分布は降水量などのデータ解析に用いられる確率分布である.原点において離散的であり,正の領域において連続的という特徴をもち,応用上非常に有用である.確率密度の計算が難しいことで知られるが,Dunn准教授が開発した優れたパーケージソフトにより,高い精度での計算が可能となっている.事前分布に含まれる超パラメータをデータから推定するのが経験Bayes推定法であり,今年度はTweedie分布においてこの推定法を考案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
管理職(経済工学科長)に就いているため学内業務が多く,研究に集中できる時間がなかなか確保できない.また,入試業務など避けられない業務のために例年参加している研究集会に参加できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
理論研究については,①α-ダイバージェンス損失関数の下で,Jeffreys事前分布を用いたBayes予測分布を優越するようなBayes予測分布を導出すること,および,②対応する事後分布を用いてJeffreys事前分布の特徴づけを行うことに取り組みたいと考えている. 応用研究については,今年度考案した「Tweedie分布における経験Bayes法による推定法」の性能を数値シミュレーションによって明らかにしたいと思っている.
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次年度使用額が生じた理由 |
管理職(経済工学科長・経済工学専攻長・経済工学部門長)に就いているため,管理運営業務が多かった.また,入試業務を担当し,以前参加していた研究集会を欠席せざるを得なかった.これらが次年度使用額が生じた理由である.ただ,勤務先である九州大学の会計ルールのため,年度をまたぐ出張(2019年3月~4月)の経費を2018年度に計上できていない.金額が70万円超になったのはこのためであり,実質的な次年度使用額は30万円程度である.
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