研究課題/領域番号 |
17K00064
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
田中 章司郎 広島経済大学, 経済学部, 教授 (00197427)
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研究分担者 |
西井 龍映 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40127684)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 空間隣接行列 / 時空間モデル |
研究実績の概要 |
時空間統計解析を行う前提として,対象とする中心メッシュの前後左右・斜めのメッシュとの関係を記述する空間隣接行列の作成が前提となる。 しかしR言語のspdepなどの一般的なパッケージでは,その作成が柔軟に実現できないことが判明した。これは,行政区画内の大きな湖,河川など,明らかに社会経済的影響のない非居住域を,パッケージでは除外できないためである。また空間隣接行列作成に関する効果的・効率的な先行研究事例が殆んど無いことも判った。 このため,オリジナルのアルゴリズムを開発してプログラムを比較検証した。 新たに作成したアルゴリズムは時間計算量および領域計算量ともにパッケージより遥かに優れた特徴を有している。パッケージを用いた場合24時間以上かけても終了しない行列作成時間が1時間以内となり,またその実行もグラフィックボードなどの装置を必要としない。特に今後,人工衛星画像データなどの巨大なデータ数のある対象とリンクして解析をすすめるには,解像度をm行xn列とすると,その2乗の大きさの行列が必要となる。今,m=n=3000とすると,9百万の2乗つまり10兆次元以上の行列のサイズとなるが,今回作成のアルゴリズムはこのことに対処する。 この成果はとりあえず学内の紀要として公開したが,さらに編集・改良後,査読付論文に投稿することを検討している。なお,ソースプログラムは "https://github.com/G-Fitrianto/2017_HUE-Journal_Formulation-W-Matrices" 上で公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初全世界を1km四方のメッシュでカバーするGridded Population of The World Version 4 (GPWv4)をベースに,ワールドデータセットを作成する予定を立てていたが,研究協力者にインドネシア・ガジャマダ大学より博士後期課程の学生を迎えたため,まずインドネシアジャバ島を対象とした時空間モデル解析に取り組む計画を立てた。 しかし,前後左右および斜めのメッシュとの関係を記述する空間隣接行列の作成が,R言語のspdepなどの一般的なパッケージでは実現できないことが判明した。 これは,行政区画内の大きな湖,河川など,明らかな非居住域を,パッケージでは除外できないためであり,自身でオリジナルプログラム作成する必要性が生じた。この成果はとりあえず学内の紀要として公開したが,空間隣接行列作成に関するの効果的・効率的な先行研究事例がないことから,さらに編集・改良後,査読付論文に投稿することを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
空間隣接行列の高速作成アルゴリズムが完成したので,GPWv4を用いた時空間モデルによる解析を行う。人工衛星データから得られた森林面積比率とグリッドセルごとの人口密度が,逆シグモイド型の非線形関数で表されることが田中・西井の一連の研究で,すくなくとも東アジア地域において判明しているので,さらに社会経済の指標となる変数の追加を検討し,インドネシア熱帯雨林にて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
パソコン価格の低廉化に伴い,当初の見積との多少の齟齬が生じた。 予定していた旅費は「7.現在までの進捗状況」で報告したとおり,統計モデリングによる解析以前に解決すべき問題が生じたため,予定していた研究打合せは行わず,使用しなかった。旅費にほぼ相当する金額は,学内紀要の超過ページチャージに費やされた。 残額は次年度の旅費,物品費などと合算して使用する。
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備考 |
GPWv4作成母体であるコロンビア大とは,データの扱い方などで引き続き連絡をとっている。しかし共著論文などの形には至っていない。
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