複数の対象者から時間の経過とともに観測した経時データに対する解析手法のさらなる発展を目的として研究を行った。申請者は混合効果モデルと反応を以前の反応に回帰する自己回帰の両者を融合した自己回帰線形混合効果モデルを以前より提案・開発しており、経時データ解析の中でも特に、いくつかの分野で別々に発展してきたダイナミックモデルの方法論の融合や新たな開発を目指した。英文書籍「Longitudinal Data Analysis: Autoregressive Linear Mixed Effects Models(経時データ解析:自己回帰線形混合効果モデル)(Ikuko Funatogawa and Takashi Funatogawa)(Springer)」の出版を行い、線形混合効果モデル、自己回帰線形混合効果モデル、非線形混合効果モデル、成長曲線、状態空間表現などについてまとめた。自己回帰線形混合効果モデル及び類似のモデルが医学以外の他分野でどのように使用されているかの調査を行った。Structural Equation Models(SEM)を基にしたダイナミックモデルが、心理・行動・社会学分野等で発展し、近年活況を示していた。特に、潜在変化スコアモデルのひとつであるdual changeモデルと自己回帰線形混合効果モデルは密接に関連していた。この他、経時データでも特殊な場合である、介入前後の2時点データの経時データ解析について論文発表を行った。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し、経時データを含む健康関連データの解析および解析手法の開発の必要性が高まっている。
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