研究課題
稀少疾患における新規治療の臨床試験では一般に,疾患の稀少性と重篤性から,試験規模を十分に大きく設計できず効果の期待できる新規治療であってもその効果を十分に支持する結果が得られない,プラセボといった対照群を設定できないため例えば自然経過と比較し治療の本質的な効果があるかどうかを適切に評価できないといった問題がある.本研究では,稀少疾患における臨床試験のデザインと解析の統計的方法を研究することを目的としている.稀少疾患における臨床試験のデザインと解析の統計的方法の研究は,社会的緊急性の高い研究課題であり,本研究から得られた成果は新規治療の臨床開発の効率性と生産性の向上に寄与することを通して,画期的な,安全で効果の高い新規治療を早期に必要な患者に提供することつながると考えられる.初年度である,H29年度は,先行研究[基盤研究C(一般)(H26-H28)『医薬品開発の複雑性と多様性に対する統計的意思決定の方法の理論と展開』で得られた知見・アイディアを改めて点検・整理し,稀少疾患の臨床試験のデザインとして,(A1) 確率化操作の方法と(A2) 適応的デザインについて,既存の方法の理論的・数値的な評価を行った.(A1) 確率化操作の方法の研究については,制約つき確率化操作・共変量適応型確率化操作の小規模試験における性能評価,小規模試験に適した確率化操作の方法の開発,応答適応型確率化操作の性能評価と確率化操作を活かした検定手法の検討を行った.(A2) 適応的デザインの研究については,有効中止および無効中止の方法の検討,試験途中での標本サイズの再評価の検討,有意水準消費の最適化の方法を検討した.また,方法が広く一般に汎用されるように,統計解析言語Rを用いて実行プログラムを整備した.
2: おおむね順調に進展している
得られた内容・結果を国内外の学会(国際学会10件)・学術誌(4件)などを通じて公表し,ほぼ計画通りに進んでいる.
今後は,先に示した全体計画に基づき,H29年度の研究を発展・拡大させる.H29に得られた結果をもち寄って議論し課題・問題点を整理し,そのうえで総合的な評価を試みる.そそして,進捗状況を改めて整理し,進展が著しいまたは進展がとくに期待されるか,または他の領域に大きい影響を及ぼすと考えられる研究箇所は適宜に研究分担者・連携研究者の追加,研究進捗の遅れている研究箇所については遅れの原因を吟味したうえで研究者の入れ替え,あるいは研究者追加といった調整を行う.H29年度から新規に検討が必要になった研究項目については,研究項目の優先順位を再評価しする.
購入を予定していたソフトウェアが翌年度以降で,大幅バージョンアップされる予定があることから,次年度に購入するのが適切と判断し,本年度は使用せずに翌年度分として請求した.
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 13件、 招待講演 4件)
Journal of Biopharmaceutical Statistics
巻: 28 ページ: 28-51
10.1080/10543406.2017.1378668
PLoS ONE
巻: 12 ページ: e01804052017
10.1371/journal.pone.0180405
Statistics in Medicine
巻: 36 ページ: 1363-1382
10.1002/sim.7225
Biometrical Journal
巻: 59 ページ: 703-731
10.1002/bimj.201600026
巻: 27 ページ: 1-24
10.1080/10543406.2016.1148710