研究実績の概要 |
我が国において稀少疾患(あるいは稀少難病)は対象患者数が5万人未満であると定義され,平成27年7月1日時点で医療費助成対象疾患である指定難病として306疾患が指定されている(厚生労働省平成27年7月1日施行指定難病(更新・新規)).稀少疾患の多くは疾患の重篤性が高く,慢性かつ進行性であり,他の疾患に比べ死亡率が著しく高い.世界的には稀少疾患の数は7,000以上とされ,The European Society of Pediatrics Oncologyの声明(www.siope.eu/activities/europeamadvocacy/rare-diseases/)では希少疾患の75%が小児疾患であり,稀少疾患の30%で患者は5歳を迎える前に亡くなると報告されている.新規治療が国を超えて世界同時開発される現在,稀少疾患の問題は我が国のみの問題でなく,世界共通の問題でもある.残念ながら,世界的に希少疾患の治療法を開発する研究者や製薬・医療機器企業は極めて少数であり,現状では殆どの稀少疾患で効果的な治療選択肢が殆ど無いか,あるいは極めて限定されている.
稀少疾患における新規治療の臨床試験では一般に,疾患の稀少性と重篤性から,試験規模を十分に大きく設計できず効果の期待できる新規治療であってもその効果を十分に支持する結果が得られない,プラセボといった対照群を設定できないため例えば自然経過と比較し治療の本質的な効果があるかどうかを適切に評価できないといった問題がある.本研究では,稀少疾患における臨床試験のデザインと解析の統計的方法を研究した.とくに,(A) 効率的な試験デザイン,(B) 頑健な治療効果推定の統計手法,(C) 既存データの活用した試験のデザインと統計手法の研究を行う.これらの検討を通して,最終的に稀少疾患の臨床試験のデザイン,データの収集と監督,解析と解釈,診断の方法を包括する意志決定の思考方法を研究した.
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