研究課題/領域番号 |
17K00070
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
黒川 敦 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (80610592)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 三次元集積回路 / 貫通シリコンビア / クロック分配 / 電源分配 / 熱解析 / 冷却技術 |
研究実績の概要 |
ヒートシンクのような外部冷却装置を使う3次元積層集積回路の冷却方法として、高効率冷却方法を探索し、積層チップの側壁(Sidewall)、チップ間(Interchip)、チップ底(Bottom)に熱伝導プレートを挿入するthermal-SIBアーキテクチャを考案した。熱伝導解析により温度上昇が従来と比べ半減することを明らかにした。また、応力解析により熱応力・機械応力に関して問題のないことを示した。 次にスマートフォンのように外部冷却装置を使わない3次元積層集積回路に対して、自然放熱だけで熱を抑制するための最適な冷却構造を探究した。積層チップ上面をサーマルプレートで覆い、短冊状もしくは複数の穴を開け、放熱面積を拡大することで冷却効果を高める方法の有効性を解析により示した。対策しない場合に比べ、最大温度を40%以上抑制できる。 また、チップの発熱に関係する電源安定化技術を検討した。多目的遺伝的アルゴリズムを用いて、許容電圧降下内で各チップの電源グリッドや積層チップのTSV(貫通シリコンビア)を部分的に最適化する方法を提案した。さらに、温度上昇を抑えるために電力消費の集中を避けるブロック配置として、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化プログラムを作成した。また、2.5次元積層の応用として積層チップを複数配置することで電力集中を分散する方法を提案した。そして、積層チップの様々な箇所のプロセス・電圧・温度変動した場合のクロックスキューへの影響を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成29年度の研究実施計画では、(1)外部冷却装置を使う3次元積層集積回路の冷却技術の開発、(2)外部冷却装置を使わない3次元積層集積回路の冷却技術の開発、の2点であった。(1)はほぼ達成し、(2)はもう少し検討の余地がある。また、平成30年度以降の計画であった電源安定化技術や配置最適化、2.5次元積層集積回路の冷却技術の開発に着手し、さらに計画にはないが本テーマに関係する温度変動を考慮したクロックスキュー解析も実施した。したがって、全体としておおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
熱を考慮した三次元積層集積回路の設計技術の開発として、電源安定化技術と配線容量抽出技術を研究する。さらに大型な外部冷却装置が使えない場合の冷却技術を探求する。 (1)電源安定化技術として、熱による抵抗変動を考慮し、積層チップ全体を高速に解析し、最適な設計パラメータを求める方法を考案し、ソフトウェアを作成する。 (2)配線容量抽出技術として、ニューラルネットワークを用いた新しい手法を考案し、ソフトウェアを作成する。 (3)大型な外部冷却装置が使えない場合の冷却技術として、ウェアラブルデバイスやIoT機器の冷却方法を探求する。 チップとパッケージの両方に対して、ソフトウェアとハードウェアの両面から研究・開発に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に学会で研究成果を発表するための助成金であったが、発表準備が少し遅れたため、次年度使用額として使用する。 具体的には、三次元集積回路の熱に関する電源設計技術の研究成果である。
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