交付申請書に記載した「研究の目的」は、複数の積層集積回路を横に並べる2.5次元、および垂直方向にのみ重ねる3次元積層集積回路の熱設計技術を開発することである。「研究実施計画」では、最終年度は回路ブロック最適配置による熱密度低減技術を開発する計画であった。 これらの目的と計画を達成するために、最終年度は、3次元集積回路のチップ構成組み換えを含むプリント基板(PCB)上の部品配置最適化技術の開発と、さらに集積回路が内蔵されたウェアラブルデバイスの熱対策技術の開発を実施した。 前者の配置最適化では、遺伝的アルゴリズムを使って、PCB上の最大温度と各部品間の配線長を最小化する。3次元集積回路の再構成、発熱部品と非発熱部品の両方を含むPCB上の配置最適化は過去に例のない技術である。温度を求めるための熱抵抗回路作成もプログラムで自動化し、実験した結果、温度と配線長を最小化できた。 後者のウェアラブルデバイスの熱対策では、3次元積層集積回路の複雑な熱抵抗回路網をシンプルな熱抵抗等価モデルに変換し、リストウェアラブルデバイスの熱設計用に熱抵抗モデルを開発した。このモデルは非常に少ない熱抵抗素子で高精度な解析を実現し、様々な本体やベルトのサイズ、形状、材質等を表現できる。さらに、将来のスマートグラスの熱設計のための熱抵抗モデルを開発した。これは全体を幾つかのパーツから構成し、電子部品の配置や電池の形状等は各パーツのモデルを変えることによって、様々なタイプのスマートグラスに対応できるようにした。市販の熱解析ソフトと比較して、精度3%以内で、30倍程度の高速化が実現できた。 これらの研究成果は、国際会議3件及び学術論文誌2件に公表した。
|