研究課題/領域番号 |
17K00074
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
井口 寧 北陸先端科学技術大学院大学, 情報社会基盤研究センター, 教授 (90293406)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | リコンフィギャラブルシステム / 電子指紋 / 音楽ファイル / FPGA / インターネット / MIDI / 人工音楽 |
研究実績の概要 |
本研究では,インターネット上の音楽ファイルから電子指紋をリアルタイムに検出し,音楽情報DB(データベース)を検索しながら,電子ファイルの流通をコント ロールするための要素技術を解明する.先立つ基盤研究(B)では,FPGA(Field rogrammable Gate Array)を用いて電子指紋の超高速計算に取り組んだ.本研究では次の段階として,電子指紋のデータベース検索に取り組む.特に実用化のために必須な検索規模の拡大(数千万曲規模)に挑戦する.検索大規模化の方針として,1. FPGAを用いてハミング距離計算専用回路による高速照合を試みる.2.少ないFPGAチップ内メモリを利用するため,クラスタリングを用いた二段階検索を試みる.音楽電子指紋の実用規模検索の最適なソリューションを解明するのが本研究の目的である. 2018年度は MIDI音源による擬似楽曲の作成アルゴリズムの開発を行った.乱数等によって,音程や音調をMIDI信号として生成し,この楽曲をピアノやギター等の楽器で電子的に演奏する.その音出力をデジタル型式でWAVEファイルに書き込むスキームである.これまでに開発したハードウェア向き電子指紋検出アルゴリズム HiFP2.0にて検出実験を行ったところ,グランドピアノとクラッシックピアノの区別は難しいが,ピアノとギターでの演奏は区別可能,また当然であるが異なるMIDIファイルから得られた演奏は区別可能という結果が得られた. 昨年に引き続き,データベース検索方法としてStaged LSH法に基づくFPGA実装およびGPGPUでの実装を改良した. この他に,このようなシステムをチップ上に効率良く収容するための階層型相互結合網についても幅広く研究を行い,成果を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた2018年度以降の実施内容は次の通りである. 1 周波数成分を用いたクラスタリング手法の開発・改良.低周波成分と高周波成分の2段階によるクラスタリング法の開発.2 MIDI音源による擬似楽曲の作成およびリッピング.3 検索の速度と精度の両面からの評価.4 近傍クラスタの検索方法の解明および検索高速化に取り組む. このうち,2018年度は1に対する予備実験としてGPGPUによるアルゴリズムの検証,2に対して擬似音楽の自動生成アルゴリズムの開発ならびに中規模(数千曲)の生成,4に対して,複数チップから成る大規模な検索に適用可能なクラスタリングアルゴリズムを開発した.この成果は国際会議で発表している他,学会論文誌に投稿し現在査読中である. 研究協力者のM. M. Hafizur Rahman (International Islamic University, Malaysia) 博士とは,前年に引き続き,将来のチップ化を見据えてハミング距離計算コアをNetwork on Chipで接続する時の構成を検討した.前年の国際会議での発表を進化させ,ジャーナル論文誌に投稿したところ,採択された.
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究実施項目として,クラスタリング法のさらなる改良と精度の検証や実システムの構築に取り組む予定である.周波数成分を用いたクラスタリング手法の開発・改良.低周波成分と高周波成分の2段階によるクラスタリング法の開発し,FPGAに実装する. 2 MIDI音源による擬似楽曲の作成およびリッピングに関して,2018年度に擬似音楽合成のアルゴリズムが開発できたので,これを多数稼動させ,検証のための一億曲スケールの音楽データベースを構築する.リッピングについても実際に様々な条件でリッピングを実施し,擬似でないリアルな音楽データベースを作成する. HiFP2.0では楽曲の冒頭3分程度で曲を判別していた.長い楽曲の場合,特徴量を楽曲全般から均等に採取することによって,判別精度を向上させることが可能であると期待できる.長い楽曲から満遍なく特徴量を抽出し,指紋を生成するHiFP2.0の改良アルゴリズムを開発し,判別精度を評価したい. これらのハードウェア向きアルゴリズムを実装する技術として,Network on Chipに関しても,階層型の相互結合網を中心に研究する.通信パケットのスループットを向上させる新しい相互結合網の構築法とパケット制御の方式を開発する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費のうち,FPGA搭載サーバとFPGAボードの調達が行われなかった点が次年度使用額が発生した主な理由である.今年度実績で述べたように,2017年度研究の結果から,GPGPUによるバッチでの検索も相当な性能が見込めることが分かった.ここで見込みとしてFPGA搭載サーバを購入するよりも,もう少しGPGPUによる検索性能を見極め,必要であればFPGA搭載サーバの代わりにGPGPU搭載サーバに切り替えて研究を進めた方が,より適切な研究ができると判断した. 2018年度の研究結果より,当初予定通りFPGAでの実装に進む方針で再度検討を行っている.最適なFPGAの回路規模や型番を改めて精査しており,2019年度のなるべく早い時期に本研究を実装する基盤となるFPGAボードを購入する.同時に設計基盤となるLinuxサーバも購入することになるであろう. 物品費以外の支出については,おおむね予定通りである.
|