本研究では,インターネット上の音楽ファイルから電子指紋をリアルタイムに検出し,音楽情報DB(データベース)を検索しながら,電子ファイルの流通をコントロールするための要素技術を解明する.先立つ基盤研究(B)では,FPGA(Field rogrammable Gate Array)を用いて電子指紋の超高速計算に取り組んだ.本研究では次の段階として,電子指紋のデータベース検索に取り組む.特に実用化のために必須な検索規模の拡大(数千万曲規模)に挑戦した. 検索大規模化の方針として,1. FPGAを用いてハミング距離計算専用回路による高速照合を試みる.2.少ないFPGAチップ内メモリを利用するため,クラスタリングを用いた二段階検索を試みる.音楽電子指紋の実用規模検索の最適なソリューションを解明するのが本研究の目的である.2019年度は 前年度に作成したMIDI音源による擬似楽曲をデータベースとして、より検出精度が高くFPGA向きの電子指紋検出アルゴリズム HiFP2.1の開発と実装を行った。新しい電子指紋検出アルゴリズムは、以前のHiFP2.0と同じく整数演算のみの計算で電子指紋を計算でき、かつ音楽ファイルから一様にサンプルを取り出すことによって、検出精度を向上させた。更にデータベース検索方法としてStaged LSH法に基づくFPGA実装およびGPGPUでの実装を改良した.前年度のSingle GPU向けの実装に対して、複数GPU向けの実装に取り組んだ。提案手法は複数のGPUに検出母体となるサンプルを割り当てる方法の改良および細かい周期での同期によって、検索精度と複数GPU利用時のスケーラビリティが向上している。 本研究期間全体を通じての大きな成果としては、MIDIによる人工音楽データベースの構築、およびFPGAやGPGPUに実装可能な省メモリな二段階の検索アルゴリズムの開発である。
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