本研究では、生体データの性質の解析、オンライン生体データ圧縮アルゴリズムの開発、情報センシングデバイスのプラットフォームの策定、生体情報センシングシステムの消費電力量削減を行うことが目標である。平成31年度(令和元年度)は、平成30年度までの成果から、生体データの性質の解析および情報センシングデバイスのプラットフォームのCPUとしてRISC-Vを選定し、RISC-Vを情報センシングデバイスのCPUとして使用するための検討を行った。Chiselを用いたRISC-Vプロセッサの自動生成を行う手法、ハードウェアとソフトウェアを単一の動作記述から生成を行う手法に関する研究である。ChiselはUC Berkeley校で提案されたプログラミング言語scalaをハードウェア記述向けに拡張した言語であり、RISC-Vの実装の一つであるRocket Chipもこの言語を使用して記述されている。Chiselを用いる場合の拡張命令に相当する追加記述を明確にし、Chiselを用いた命令拡張手法を構築した。また、追加命令の単一命令動作記述から、RISC-Vのソフトウェア開発環境であるgnutools中のアセンブラ、シミュレータに対するソフトウェアを自動生成するとともに、拡張命令を有するプロセッサのハードウェア記述を同時に生成する環境の試作を行った。これらの研究により、RISC-Vを用いたIoT向け情報センシングデバイス向きのCPU設計を容易化する知見を得た。これまでに検討してきた心電データの波形そのものに着目し、心電データを窓関数により切り出し、切り出されたデータを代表する形に分類する自動クラスタ分割手法を用いた圧縮手法は、その同型の波形データの抽出に多くの演算を必要とし、波形パターンの抽出の専用命令化が一つの改良命令セットであるとの指針を得た。
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