研究課題/領域番号 |
17K00084
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
渡辺 晴美 東海大学, 情報通信学部, 教授 (40333190)
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研究分担者 |
今村 誠 東海大学, 情報通信学部, 教授 (30780291)
島崎 みどり (菅谷みどり) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50434288)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IoT / UML / Model-Driven Development / COP / FPGA / AOP / Object-Oriented Paradigm |
研究実績の概要 |
本研究では、IoT等の次世代システムには、「複雑な環境におけるサービスの切り替え」が必要であるという課題に着目し、コンテキスト指向プログラミング(COP)と呼ばれる技術を基盤とした総合開発環境を提案することを目指している。、COPは実行時横断的関心事と呼ぶ問題を解決することが可能である。横断的関心事は、ソフトウェアを複雑化する本質的な問題として知られており、IoT等の次世代システムでは、AIによる振る舞いの変更の必要性から、この横断的関心事が、実行・運用時に発生する。このような問題に取組むのが本研究である。研究の特徴は、導入のための教育面と信頼性を考慮し、サービスを切り替える部分とサービス提供部分を分離したアーキテクチャを有する点にある。本年度の国際会議での主要な発表は以下の通りでる。 (1) レイヤ間の活性・不活性問題の解決:COPでは、レイヤという単位で、レイヤの活性・不活性により書き換えを行う。その際に、意図した通りでない動作になることがあるという問題が発生する。その問題を解決するためにZoneと呼ばれる協調機構を提案し、JavaScriptを拡張したCOPに実装した。 (2) モデル駆動開発への適応:COPの研究はプログラミングが中心であり、ソフトウェアモデリングと関連した研究は少ない。COPの概念とモデルとの関連性や、検証を目的としたモデリングは行われていたが、プログラムを自動生成するモデル駆動開発は行われていなかった。COPの特徴は上記の通りレイヤであるが、UMLにレイヤの概念を拡張した新たなモデルを定義し、そのモデルからをCOPのプログラムを自動生成した。また、既存の著名なMDDツールに実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
協調機構に関しては、COPの提唱者Robert Hirschfeldのグループに参画し、JavaScriptを拡張したCOPに実現することができた。計画段階では、本研究は組込みシステム向けのプログラミンング言語のみの実現を目指し、すでに実現済みであるが、今年度のJavaScript版は汎用システム向けであり、応用の幅が広がった。また、学術的な貢献としては、並行性とレイヤとの活性・不活性との関係について具体的な例を用いて分類できた。 モデル駆動開発への適用は、計画段階ではアイデアを実装し確認する程度を想定していた。COPの概念を踏まえたモデルからCOPのプログラムを生成するモデル駆動開発の実現は、これまで提案されていないため、アイデアを実証することを目指していた。今年度は、メタモデルやアクション言語を利用し、汎用のツールに実現することができた。汎用ツールへ実装することで、今後の応用発展が期待できる。また、学術的な貢献は、COPをMDDへ適用するためのプロセスをフレームワークとして提供できたことである。 以上の通り、今年度は、学術的貢献と普及・応用の両方の面に置いて、計画以上の成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Society5.0やDX時代には、AIを取り入れた進化型IoTロボットによる豊かな生活が望まれている。進化型IoTロボットの開発・運用では、環境適用や多様なサービスの適用にAIが導入されることで、実行時横断的関心事と呼ぶ問題が深刻化する。この問題は、ソフトウェアを複雑にし、開発・運用を極めて困難にする本質的な問題である。これまでの研究も実行時横断的関心事に着目してきたが、今後、以下の研究に着手し、より現実的な解決を試みる。 課題(1): 協調機構: これまでの協調機構は、ソフトウェアのみに限定していたが、ソフトウェア・ハードウェアを協調させるための新たな協調機構を提案し、COP上で高位合成を行い、実行中にシステムを横断的かつ広範な書き換えを可能にする。 課題(2): モデル駆動開発・シミュレーション:(1)のプラットフォームのためのモデル駆動開発環境を構築する。COPの概念を取り入れたモデルからのコードを自動生成し、ペトリネット等での型式手法でのシミュレーションを可能にする。 課題(3): 多様なサービス:仮想的に与えられた環境に応じて複数のサービスを行う実機のロボットを実現する。提案したモデル駆動開発・シミュレーションを行い提案したプラットフォーム上で進化型IoTロボットが多様なサービスを提供できることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた予算は、2019年度末に国際会議発表のための参加費と交通費である。2019年度末の国際会議は延期またはオンライン開催となった。2020年度は国際会議で発表したが、オンライン開催であったため使用額が少なく、再度、次年度使用額が生じた。今年度も、発表およびその準備に利用する。オンラインが続く場合、より多く議論の場に参加する、論文の質を向上させるために利用する予定である。
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