研究実績の概要 |
高信頼ソフトウェアの開発は,安心・安全な社会を実現する上で必要である.ソフトウェアの信頼性を高める方法の一つとして,プログラムの自動合成がある. 良い仕様から仕様を満足するプログラムを自動合成することが出来れば,信頼性の高いソフトウェアが開発される.本研究では,分散システムにおけるモデルベースのソフトウェア開発を対象として,抽象的な要求仕様(シナリオ)から,分散システムを構成するモジュールの振る舞いモデル(状態機械)を自動合成するための理論構築およびアルゴリズム開発に取り組むことを目的としている.シナリオから状態機械を自動合成する多くの研究では平面的な状態機械を用いている.しかし,平面的な状態機械はしばしば複雑になり,設計者にとって理解しやすいモデルとなっていない.先行課題(基盤(C) 23500045, 26330083)では,シナ リオの「再合成可能」な分割に基づくペトリネットを用いた階層型状態機械の合成アルゴリズムを開発した.先行課題ではシナリオが一つだけの場合を対象としていたが,本研究では複数のシナリオから状態機械を合成するための理論的研究を行っている.平成31年度までに,シナリオの数理モデルにイベントストラクチャと呼ばれる数理システムの利用を検討した.イベントストラクチャに対して再合成可能性を提案し,再合成となるための必要条件および計算アルゴリズムを導出した. 平成31年度で提案したアルゴリズムは計算量の点において改善の余地があった.令和2年度では擬似多項式アルゴリズムを提案し,高速化に成功した.その結果を,学術雑誌および学会(国際会議: 1)にて発表した.
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