研究課題/領域番号 |
17K00103
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高木 智彦 香川大学, 工学部, 講師 (70509124)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ソフトウェア工学 |
研究実績の概要 |
ソフトウェアの品質を確保するための方策のひとつとして、ソフトウェアの期待される振舞いを表す形式的モデルに基づいて、体系的なテストケースを設計することが考えられる。そこで本研究では、まず、形式的モデルとして、VDM(Vienna development method)で用いられる仕様記述言語(VDM++)を導入することによって拡張した状態遷移図(拡張状態遷移図)を考案した。拡張状態遷移図は、状態遷移に付随する複雑なデータ処理を伴う動作(アクション)や、遷移が発火するための条件(ガード)などを形式的・抽象的に記述できるようにすることを目指したものである。これによって形式的モデルの表現力が向上し、適用範囲が広がるとともに、より精密なテストケースを生成できるようになると考えられる。拡張状態遷移図をVDM仕様(ソフトウェアの実行可能な仕様)に変換する方法についても検討したので、VDM用のツール(インタプリタ)上で実行し、その動作を確認することができる。本研究では、さらに、拡張状態遷移図のためのテスト基準(拡張Nスイッチ網羅基準)を定義した。これは、従来の一般的な状態遷移図において利用されるNスイッチ網羅基準を拡張したもので、テストで網羅すべき要素として、状態遷移列だけでなくアクションの内容まで考慮に含めている点が特徴である。本研究では、以上について、簡単な例題に対して試験的に適用し、考察を行った。本手法によって、より精密で網羅的なテストが可能になることが期待できるが、その反面、実行すべきテストケースの量が多くなる可能性がある。テスト工程に投入できるエフォートは有限であるため、今後検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形式的モデルとして拡張状態遷移図を考案し、その表記方法やVDM仕様への変換方法を提案することができたため。さらに、拡張状態遷移図から体系的にテストケースを生成するためのテスト基準として拡張Nスイッチ網羅基準を提案することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
拡張状態遷移図に基づいて、テスト基準を満たすテストケースを生成するためのアルゴリズムを構築し、ツールに実装する。そして、ある程度の規模や複雑さをもつ例題に対して適用し、有効性を評価する。課題が見つかれば、拡張状態遷移図の表記方法やテスト基準、アルゴリズムなどを見直す。必要に応じて、複数のテスト基準を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張が国内のみであったこと、研究成果の一部を次年度に発表するようにしたことなどの理由により次年度使用額が生じた。これを、研究成果を発表するための学会参加費や旅費、論文掲載料などとして使用する予定である。
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