本年度の研究では、拡張状態遷移モデルとして拡張画面遷移図に注目した。拡張画面遷移図は、特にWebアプリケーションのためのモデルで、通常の画面遷移図に制約条件(Webアプリケーションが満たすべき条件)や操作(画面遷移に伴うWebアプリケーションの動作の定義)を付与することによって、より精密に仕様を記述することができる。まず、拡張画面遷移図をVDM++仕様に変換する手法を構築した。VDM++仕様は、Vienna Development Methodにおけるソフトウェアの形式的仕様であり、VDMインタプリタ上で実行したり検証したりすることができる。したがって、VDM++仕様に変換することで、精密なテストケースを導出できるようになるだけでなく、モデルの誤りに起因して不正確なテストケースを導出するリスクを低減できると考えられる。次に、大量のデータを扱う性質をもつWebアプリケーションのために、広域データフロー基準の概念を導入したテスト基準を検討した。テストケースは、このテスト基準における測定対象をできるだけ効率的に実行できることが望まれる。そこで、発見的手法を用いてVDM++仕様(拡張画面遷移図)からテストケースを生成するアルゴリズムを検討した。 研究期間全体では、拡張状態遷移モデルとして、EFSM(Extended Finite State Machine)やEPN(Extended Place/transition Net)、EPNAT(Extended Place/transition Net with Attributed Tokens)、拡張画面遷移図を扱った。そして、これらを用いたモデリング手法やVDM++仕様への変換手法、テスト基準、テストケース設計手法などを構築した。
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