研究課題/領域番号 |
17K00115
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
紙名 哲生 大分大学, 理工学部, 准教授 (90431882)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文脈指向プログラミング / リアクティブプログラミング / 時系列データ / プログラミング言語 / 永続化 |
研究実績の概要 |
ソフトウェアとハードウェアの融合が進む現在,ソフトウェアは外界から取得される多様な情報に応じて適応的に動作することが求められる.そこには複雑なデータの流れとそれに応じた振る舞いの動的な変更があり,このことは既存技術によるソフトウェアの開発を難しくする.本研究では,この問題を,プログラミング言語による記述を変えることによって根源的に解決する.具体的には,データの流れを宣言的に記述できるリアクティブプログラミング言語SignalJと,適応的な動作をモジュールとして分離できる文脈指向プログラミング(COP)言語ServalCJそれぞれの機構を統合したシンプルな計算体系とそれに基づくプログラミング言語を実現することによってこれを解決する. 当該年度では,本研究の応用として想定するIoTなどの分野におけるアプリケーションでは時系列データが扱われるという観測に基づいて,リアクティブプログラミングの言語要素であるシグナル(時間変化する値)を永続化することに取り組んだ.通常のシグナルは一時的な値であるのに対し,永続シグナルは値変化の履歴が永続化されるため,プログラムの起動や停止を跨るライフサイクルが必要になる.また,同じライフサイクルで管理される関連する永続シグナルの集まりを,ひとまとまりのオブジェクトとして識別する必要がある.これらを可能にする新たな言語機構シグナルクラスを提案し,それをSignalJの実行時ライブラリを時系列データベースと統合するという方法で実装した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プログラミング言語の実装はおおむね順調に進んでいる一方で,それを活用するための開発環境の整備や,具体的なソフトウェア開発事例の中でその効果を検証する取り組みが進んでいない.とくに後者については,研究室内で協力者と連携しながら進めていく必要があったが,新型コロナウイルス感染症への対策のために研究室の運営をオンライン化する過程で,研究環境の整備に時間がかかり,またこうした取り組みが初めてのことで関係者との連携も滞りがちであったことが原因であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
永続シグナルやシグナルクラスの機構を扱ういくつかのアプリケーションを検討し,これらの機構がプログラミングの作業に与える効果を,具体的なソフトウェア開発事例の中で検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
まず,新型コロナウイルス感染症の影響で,予定していた出張(海外出張含む)を全てキャンセルしたため,旅費の支出が一切なかった.またソフトウェア開発事例の中における検証を,前述したとおり進捗の遅れにより実施しなかったため,予定していた人件費・謝金の支出もなかった.以上が未使用額が生じた理由である. もともと当該年度で終了するはずであった研究課題であるため,実施できなかった部分の計画を次年度に繰り越すことで,予定通り使用する計画である.
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