研究課題/領域番号 |
17K00122
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
笹森 文仁 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (70298090)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | OFDM / 無線センサネットワーク / 広域化 / 長寿命化 / 低消費電力化 |
研究実績の概要 |
本研究では,無線センサネットワークエリアの広域化および送信機の長寿命化(低消費電力化)に主眼を置き,スペクトル拡散方式(M-ary SS方式)を活用したOFDMベースバンド伝送方式(エルミート対称符号化OFDM方式)の電力利用効率ならびに回線利用効率を明らかにすることを目的としている.2017年度は電力利用効率(ビット誤り率)に主眼を置いて検討したが,2018年度は回線利用効率(スループット)とのバランスも考慮に入れながら,マイコン開発ボードやシングルボードコンピュータを用いた実験的検討ならびにコンピュータシミュレーションを用いた検討を進めた. 実験的検討に関しては,無線センサネットワークを柔軟に構築することを目的として,可視光伝送系やFMステレオ伝送系,超音波伝送系の3種類の無線伝送系を構築し,提案方式のビット誤り率特性およびスループット特性を取得した.その結果,いずれの伝送系においても提案方式の有効性が確認できた.また,モノのインターネット(Internet of Things: IoT)への提案方式の活用を目的とした検討,すなわち,廉価なマイコンへの提案方式の実装を考慮した検討も進めた.具体的には,OFDMベースバンド伝送方式として,高速フーリエ変換(FFT)に基づくOFDM方式だけでなく,Wavelet変換に基づくOFDM方式についても検討した結果,後者の方が無線信号処理の計算負荷が軽いことがわかり,スループット特性の改善につながることが確認できた.さらに,Android端末への提案方式の実装についても検討も進めた. コンピュータシミュレーションを用いた検討に関しては,ビット誤り率特性およびスループット特性の双方の改善を目的としたM-ary SS方式の多値化方法を提案するとともに,誤り訂正符号化(LDPC符号化)や多シンボル遅延検波の導入に関して検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画のうち,2017年度と2018年度に予定していた検討項目は概ね終了し,当初予定していなかった検討(ビット誤り率に関する理論的側面からの検討)も実施した.それらの検討結果が国際学会での発表3件,国内学会での発表7件の成果につながったことから,トータルとして「おおむね順調に進展している」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度となる2019年度は,これまでの研究で得られた提案方式の有効性を十分に発揮するような制御方法について検討し,実験的検討を進める. 電力利用効率の向上効果,すなわち,従来方式と同一の受信電力で伝送品質(ビット誤り率)を改善できる効果は,送信機の送信電力を低減させて同一の伝送品質を担保できること(送信機の低消費電力化)と等価であり,送信電力を維持して同一の伝送品質を担保できる伝送距離を延ばすこと(無線ネットワークエリアの広域化)とも等価である.また,後者に関しては,広域化に代わって回線利用効率の向上につなげることも可能であることから,無線ネットワークに関する様々な環境を想定した実証実験を実施する. さらに,本研究で提案しているM-ary SS方式は電波伝搬が安定的な環境(仲上-ライスフェージング環境)で効果が発揮される方式であるのに対して,電波伝搬が劣悪な環境(レイリーフェージング環境)ではM-ary SS方式よりも繰り返し符号化方式の方が良好な特性が得られることが過去の研究から明らかになっている.実世界とサイバー空間が相互連携した社会(CPS/IoT社会)に対する期待は様々であり,必要とする無線ネットワークの形態も様々であることから,無線ネットワークエリアの広域化に関する発展的な検討として,繰り返し符号化方式の高効率化についても検討する. 以上の検討で得られた知見を国内外の学会にて発表する.
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